タクシー運転手のようなドライバー職業は体力を使う仕事です。

長時間運転をしているため、常に集中力が必要であり神経も使ううえに、同じ姿勢で座ったまま、業務時間上不規則な生活リズムになりやすく、体力も消耗します。

そこで今回は、タクシー運転手と健康の関係について詳しく説明します。
健康管理の方法や、どのように健康を維持できるのかといった対策もご紹介します。

健康管理と事故の関係

健康管理ができなければ事故につながる

人の命を預かり、道路上の運転者や歩行者の安全を確保しながら輸送に従事するタクシー運転手は、常に自身も心身共に健康であることが求められます

これは、タクシーだけでなく鉄道・航空・海運など公共輸送に携わるすべての人に言える事ですが、タクシー運転手は路上での危険に遭遇しやすい立場なだけに、その注意力を最大限に引き出すため、他の公共輸送従事者以上に健康管理が求められます。

ひとたび事故を起こしてしまえば、運転者の命が危険にさらされ、会社としても対処が必要となってきたり会社の名が傷ついたりします。事故の被害者、その家族、周囲の人にも迷惑をかけてしまいます。

事故は起こさないよう、防止の努力をすることは、タクシー運転手という職業で働いているうえで守らなければならない必要最低限のマナーではないでしょうか。

そこで、事故を起こさないためには、健康を維持することが必要不可欠となってくるのです。

健康を維持する重要性

タクシー運転手として安全に業務を行ううえで、健康管理の重要性を示すデータがあります。
次のグラフは、国土交通省自動車局 自動車運送事業に係る交通事故要因分析検討会 によって提唱された「事業用自動車の運転者の健康管理マニュアル」から参照したものです。

タクシー

少し古いデータになってしましますが、年々健康状態が原因による事故発生数が増加していることが分かります。

バスとは異なり、タクシーやトラックといった一人という状態で長距離運転が求められる仕事は健康管理が行き通っておらず、事故の発生率が高くなっているようです。

重要なのは、この事故発生数はすべて健康状態に問題があるためカウントされたものだということです。健康でいないことが、どんなに危険かわかっていただけましたでしょうか?
健康管理というのは運転を仕事とする人にとって重要なことなのです。

タクシー運転手に多い病気

では、実際に事故を起こしたタクシー運転手がかかっていた病気で多いものは何でしょうか?
ここから紹介していきます。

まず、最も多いと言われているのが脳血管疾患です。
くも膜下出血、脳内出血、脳梗塞などがそれにあたり、なかには死亡する人も少なくはありません。

次に多いのは心臓疾患です。
心筋梗塞狭心症心不全などが挙げられます。これも予兆もなく突然発症するもので、運転中であろうと対処することが難しいのです。

その他多い症状は、めまい、失神、エコノミー症候群による血栓症が事故要因として挙げられます。

また、事故発生につながらなくとも慢性的な症状としてよく見られるのが、不眠症、生活習慣病、腰痛です。タクシー運転手の他の業種にはない特徴がこれらの病気を引き起こしていると言えるでしょう。

ただ、生活習慣病などの生活面に問題があって発症している病気は、予防することが可能です。

 

 

不規則な勤務体系だからこそ、求められる健康管理への高い意識

隔日勤務のタクシー運転手は、ほぼ一日を車の中で過ごし、ストレスが溜まった状態で帰宅します。

そこで例えば、勤務を終え「ボロボロ」で無防備な状態の内臓に、強力に冷えまくり口当たりの良いビールやチューハイを流し込むことは、内臓に更なる負担をかけ、やがて内臓疾患を引き起こすきっかけとなってしまいます。

加えて足腰は長時間の運転でダメージを受けています。そのまま放置しておくと、筋肉にダメージを受けるだけでなく、老化の進行を早める事になります。
野球やサッカーなどのプロスポーツ選手は、試合が終わった後入念に体の手入れを行うと言われています。

24時間近く車と共に走ったタクシー運転手も、自分で感じているよりも体は疲労を感じているのです。

だから「勤務明けの一杯」の前に、体をしっかりケアする必要があります。そういった意識を常に高く持つ事で、長期間に渡る運転手人生を、無理なく健康で過ごせることが出来ると言う訳です。

体に気を付ければ、60代70代でも40~50代顔負けの健康な心身で日々の乗務に対応出来ます。

タクシー運転手が健康を維持するための3つの対策

重要なのは、健康を維持するための取り組みを意識して日頃から行うことです。

ではどのような取り組みが挙げられるのでしょうか?
ここから3つの対策ポイントをご紹介します。

1.適度な運動を取り入れる
2.自分の生活に合った勤務形態を選ぶ
3.栄養バランスを意識した食事をする

1.適度な運動を取り入れる

タクシー運転手はずっと同じ座ったままの体勢でいることが多いです。
休憩の時以外はほとんど動くことがなく、足腰が痛くなりやすいですよね。

血の巡りが悪くなっていて基礎代謝も自然と落ちていきます。こうなると体に悪影響を及ぼしていますので、ここで運動を取り入れることが大切です。

いきなりジムに通って走れ、というわけではありません。ストレッチやジョギングといった、本当に簡単な運動を日常に取り入れるだけでもその効果は絶大です。体を全く動かさないのと定期的に動かすのでは体の健康状態が変わっています。

朝の30分、休みの日の30分だけでもウォーキングを始めてみてはいかがでしょうか?

2.自分の生活に合った勤務形態を選ぶ

タクシー運転手の勤務形態は、隔日勤務、昼勤、夜勤の3種類あります。
そのどれを選ぶかは、本人次第なのです。例えば副業をしている人が隔日勤務で働き、休みの日に副業の方に取り組む、となると明らかに働きすぎです。当然生活リズムは乱れ健康状態に害を与えてしまいます。

そのように、自分の生活によって無理のない勤務形態を選ぶことは非常に重要です。

3.栄養バランスを意識した食事をする

睡眠、運動ときてもう一つ大切なのは食事です。食べるものが体をつくっているといっても過言ではないほど、食べたものは直接体に影響してきます。

仕事で疲れたからと言って毎回のようにスーパーやコンビニの弁当、デリバリー、カップラーメンや冷凍食品といった栄養バランスが偏ったものを食べ続けるのはやめましょう。自炊をしろというわけではありませんが、お惣菜を買うにしても栄養バランスを考えて買うことで体は喜びます。

野菜はきちんととっていますか?鉄分やカリウムは取れていますか?
そういったことを少し意識して食材を選ぶようにしましょう。

理想の明け休みの過ごし方について

帰宅後再び就寝し、大体昼前位まで寝ましょう。

朝食は、昼食兼用のブランチスタイルで。和食なら、主催がおかゆなど消化に良いもので。負担にならない様「腹6分目」が理想です。食事後は静養しますが、体が動かせられるようなら、散歩・ジョギングなどを行い、体力維持に努めましょう(有酸素運動が出来れば一番)。

帰宅後の飲酒は自由ですが、節度があり自分自身の量を守って飲みます。飲酒の際は、枝豆・しめさば等良質で体に良いたんぱく質をアテに飲みます。

夕食は、遅くとも夜7時過ぎには終え、入浴の後就寝して翌日の勤務に備 えます。翌日が公休の連休の場合でも、夜10時までには就寝しましょう。

一方、乗務中の運転手に対しては、こんなアドバイスがあります。

乗務中の過ごし方について

健康管理のために、もちろん乗務中にも気を付けてほしいことがあります。
具体的にいくつかお伝えします。

・運転スケジュールは、4時間営業走行毎に、大体20分休憩を取りましょう。
一乗務で通算3時間最低でも休憩する必要があります(道路運送法指針による)。

遅番勤務(朝帰り組)は、深夜帯は必ず30~1時間寝ることが必要です。

・食事は麺類など消化の良いものか、和定食など体に負担のならない食材を使ったもので。牛丼・ハンバーガー・調味料を多用した洋食類は、遊眠作用が強いので極力避けましょう

・走行中でも、足を伸ばしたり、空車時は腕を上へのバスなどストレッチをして疲労の蓄積を防ぎましょう

タクシー運転手と言う仕事は、世間では働くサラリーマンの感覚とはガラッと世間が変わるので、明け休みや仕事中の休憩の取り方に戸惑うと言うケースが多々見られます。

明け休みが長いので開放感に浸って、朝から24時間営業の居酒屋で飲んだくれし、翌日アルコール検査に引っ掛かって大目玉を食らった新人も多数知っています。

仕事と仕事の間に健康管理を怠らず、体を休め鍛え、適度に楽しむ方法を取得出来ねば、タクシー運転手人生だけでなく自分の寿命を縮めかねないことにもなり兼ねません。

タクシー運転手の健康を守る企業としての取り組み

洗車、点検

さて、タクシー運転手個人の健康管理については、各タクシー会社の指針にゆだねられていますが、ではタクシー会社(企業)としては、どの様な取り組みを行っているのでしょうか?

その大きな活動の一つが「健康診断」です。

「簡易検査」と「本検査」と言われるものがあり、「本検査」では、検尿・検便に加え血液採取や心電図検査、更に40歳以上は悪夢の「バリウム検査」が待ち受けているのです。

この本検査で、大概何かしら病気を患っている運転手は見つかるもので、指摘を受けた運転手は、直ちに掛りつけか指定の病院で再検査・治療を受け、その報告が完了しないと乗務に復帰出来ないという規則がある会社もあります。

東京四社の一つkm・国際自動車では、東雲にある健保センター内に看護師の方が常駐し、運転手からの健康に関する助言やアドバイスを行っている本格的な対応もあるそうです。

km・健康管理室(東雲健保センター)常駐の看護師による健康相談

一方、日本交通グループの一つで杉並に本社がある「キャピトルモータース」では、日本女子大学の先生を招いて「健康講習」を開催したり、外部の専門家の協力を受け、乗務中や明け休みにも気軽に行えるストレッチ体操の実践活動を行っているそうです。

キャピトルモータースによる健康管理への取り組み

タクシー運転手の健康管理のまとめ

他の業種以上に健康管理が求められる仕事

一般に健康を気にしていなさそうと思われがちなタクシー運転手ですが、実は厳密な健康管理の元で走っている事をお解り頂けたと思います。

安全運転を続けるためにも、タクシー運転手は健康管理を怠らないことが大切なのです。

少しでも体に異変を感じた場合は病院で診察してもらうようにしましょう。



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今年6年目の乗務員生活を謳歌している現役タクシードライバー。1967(昭和42)年生まれ。2013(平成25)年日本交通系タクシー会社のドライバーとなる。黒タク資格&スリースター(最上級乗務員)資格所有。