45歳で二種免許取得した現役タクシードライバーが教えること

実技から学科試験の他に健康診断もある

街中を走っていると、タクシーやバスのナンバープレートが緑色であることに気付く方が多いと思います。また、一部のトラックや特殊大型車両にも、緑ナンバーが付けられているケースがあります。

では、緑ナンバーを付けているタクシー・バス・トラックを、皆さんが普通持っている普通免許or中型・大型免許で運転出来るのでしょうか?

チッ…チッ…チッ…

答えは「ブッブー✕✕✕」何とダメなのです。

こうした緑ナンバー車両を運転する場合、一部例外はありますが、概ね「二種免許(別名・営業免許)」を取得した運転者しか運転出来ません。

では、緑ナンバー車両の運転に必要な「二種免許」とは、一体どのようなものなでしょうか?

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二種免許とは何か?

皆さんが自動車を運転するために持っている免許は、普通免許と言いますね。これは厳密にいうと「普通第一種運転免許」と言われます。これは、自家乗用車を運転するのに必要な免許。一般的には、自動車教習所に入所して実技教習を受け、終了後に各地の運転免許センターで学科試験を受験し、合格して晴れて普通免許が発行されます。

ところが…普通免許を取得している人が、道路交通法や道路運送法で「絶対やってはいけない事」があるのです。

それは…不特定多数の他人から費用を受け取って、移送を行う事なのです。こうした事は「営業行為」と見なされ、その行為を行う上で必要な法令の解釈や運転技術が伴わない為、絶対やってはいけないとされています。

道路運送法96条「自家用自動車による有償運送の禁止」について

最近はUBERなどの「シェアライド」でいわゆる「白タク行為」が横行していますが、一撃で取り締まりを受ければ… 罰金150万円(以下ってあるけどほぼ満額!) 過料される訳。

最近は、国交省のいわゆる「白タクGメン」が、羽田や成田&東京駅で目を光らせており、実際摘発される現場も目撃しました。

国の方針として、公共交通に於いては「良質で安全な運送を確保」する事が求められ、特にタクシー&バスと言った道路輸送においては「旅客運送に精通し、かつ技能を有する者のみ携われる。」と定義されています。

こうした考えに基づいて導入されたのが「二種免許(営業免許)」なのです。

どの様な車両を運転するのに必要か?

では、どの様な車両の運転に「二種免許」が必要となるのでしょうか?
先程来お話しているタクシー&バスは、仕様の如何に関わらず二種免許を取得した運転手が運行せねばなりません。

二種免許の総則や規定・種類については、ウィキペディアを参照下さい。
ところで、この二種免許を巡って、最近… 「これはアカンやろ~」 とタクドラ諸氏から指摘を受けているケースが、多々あります。

例えば、葬儀会社の霊きゅう車。昔はご遺体(いわゆる仏様)のみ乗せて斎場へ向かうケースが殆どでした。ところが最近は、喪主や親族の方が仏さまと同乗して斎場へ向かうケースが殆どです。加えて、最近の霊きゅう車の殆どに「緑ナンバー」が付けられているのです!

要するに、仏様は「人」ではなく「モノ」と解釈されているので、仏様が乗る分に緑ナンバーは必要ありません。ところが、ご遺族が乗った途端、霊きゅう車は「不特定多数から金銭を受け取って、移送を依頼された車」に「へん~しん(トウ)」してしまうのです!

なぜ霊きゅう車が「緑ナンバー」かと言うと、霊きゅう車は事業用車両であり、加えて移送に金銭が絡むためなのです。

「お金を払ってモノを運ぶ」って訳ですから、扱いは事業用トラック(例えば、ヤマト等の路線便や日通の現金輸送車)と同じ。と言う訳で、事業用の「緑ナンバー」が付くのです。こうした車両の場合、人の移送は伴わないので普通免許の運転手が運転しても、お咎めはなしとなるのです。

しかし上記の通り、ご遺族が同乗すれば自然と「有償移送」が成立してしまうので、二種免許保持者が運転する必要が出て来るのです。

こうしたことを巡っては、地域毎に対応が分かれており、各陸運局(支局)が研修を開いて許可書(いわゆる「なんちゃって二種」)を出しているケースもあれば、厳密に二種取得者以外は「運転御法度!」とする地区も増えています。なお各陸運局(支局)では、今後は「二種取得」を進める方向で動いているようです。

以前にも話しましたが、タクシーの回送業務や事故救援に向かう車両については、一種免許でも構わないとされてきましたが、上部団体の東タク協(東京ハイヤー・タクシー協会)から、そうしたケースでも二種取得者の運転が望ましいとお達しが出て、現在はそうなっていますね。

二種免許を取るのに必要な条件とは?

教習所卒業はベテランドライバーでも平均1か月

車ではなくロケットの免許でも取りに来たのかとおもいました

では、事業用車両・旅客輸送に欠かせない二種免許(営業免許)は、どうすれば取得出来るのでしょうか?

一般に「普通免許(普通自動車運転免許)」は、日本国籍を有する満18歳以上の方なら、誰でも試験に合格すれば取得出来ます。

~じゃぁ二種免許って、営業免許だけの違いなのだから、ヲレ18歳何で取りに行くぜ~ってのは…✕✕✕ブッブーってことですよ。

二種免許を取得する道のり…それは想像を絶する長ぁ~い道のりなのです。

以前にも私が書いたことですが、普通免許と二種免許は、全くの別物と考えておく必要があります。確かに普通免許取得から三年以上経てば、二種免許を取得することは「法的に可能」です。

しかし、教習所の実技講習を滞りなく(全て一発でOKをもらう)終わらせる程の運転技能は、3年そこらで得られるものじゃありません。

免許取得後に宅配業者に就職し、常に運転してきた人や永年通勤に車を使用してきた方なら、仮に免許取得後3年たった時点でも、十分な技能はあると考えられます。しかし「サンデードライバー」や「夏休み位しか長距離運転の経験がない」人が、いきなり二種免許に挑戦することなど、清水の舞台から飛び降りて生還する事より難しいのではないでしょうか??

19歳に普通免許を取り、26年を経た45歳で二種免許を取得した私でしたが…全く違う免許(飛行機かロケットとか?)を取りに行ったと言うのが正直な気持ちでしたね。

最大の難関は学科試験!合格点は90点以上

ウチの会社で言うと、新卒のドライバーが教習所を卒業するのに大体2ヵ月掛かると言います。幸いにも私は半月で潜り抜けましたが、それでも教習所の教官から早い方と言われました。20年以上の運転歴がある方でも、平均的に1ヵ月は掛かるとのウワサも。

そして教習所を卒業して「実技免除」となっても、最後に待ち受けるのは史上最大の難関…それが、「二種学科試験」そう…これなのです。

因みに埼玉県では、1問1点で100問出題のマークシート〇✕選択。勿論合格点は90点以上!!後の章で、全国的な合格率について話はしますが…埼玉県の二種学科受験で、一発合格は「キセキ」に近いと言われています。

改めて言いますが、私はその埼玉県の二種免許学科を一撃一発合格(自慢してます!)したのですよ。ウロ覚えですが、当日二種学科を受験した人の内、合格で残った人は確か3分の1居たかどうか…。

では、その二種学科試験に、どの様な問題が出て来るのでしょうか?
最近は、数多くのEラーニングがあって、手軽に二種学科の問題に接する事が出来るようになっています。皆さんも早速やってみませんか?

一般のシロウトが、100点中70点以上取れれば、学科では苦しまずに合格出来ると言われますが「全く歯が立たなかった(涙)」と言う方は、恐らくですが2回ほど落ちてから…と言う事になりますね。

その他の二種免許取得に必要な試験(検査)とは?

さて、二種免許取得の実技教習や学科試験の話は前章でお話ししましたので、ここでは付随する各種検査のお話をしたいと思います。

タクシー会社に就職希望の応募し、最初の面接を受けた際、殆ど例外なく別室へ通され「ある検査」が行われます(会社によっては、面接前に行われるケースも)。

それは…深視力検査と呼ばれるもの。道路交通法により、二種免許だけでなく大型免許・けん引免許などの取得希望者には、検査が義務付けられています。

深視力検査とは?さくら那須モータースクールのHPより参照

因みに、この検査に合格しなければ、経歴が優れ事故違反歴が全くない方でも…さよならぁ~(oh、ジュリィ~)となってしまいます。一部の眼科医でも、深視力検査はやっていますので、タクシー会社受験を前に気になる方は、是非受信をお勧めしておきます。

タクシー運転手になるためには健康診断もある

そして、一次面接が合格となれば(又は一次面接と併せて行われる)、各タクシー会社の指定医療機関で、健康診断(精密検査)を受けねばなりません。普段の健康診断の延長線の様に思えますが、下記の様な点までチェックされます。

  • 身体に入れ墨又はボディペイントを施していないか…やっていたら即✕
  • HIV・梅毒などの「性行為感染症」に感染していないか…これも即✕…まぁ、普段でもアブないって思いますけどねぇ
  • 精神疾患・認知症又はその前段階にあると疑われないか…日交のタクシー、首都高で逆走!なんてTVに出てほしくないから

検査はかなり厳密に検査が行われ、一つでも引っ掛かれば✕です。

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気になる二種免許・試験の合格率

以前にも書いた話ですが、タクシー会社に乗務員候補生として採用されると、「〇〇県(又は会社指定場所)へ住民票を移しておいてね」と言われることがあるのです。

要するに、二種免許の試験内容が…甘い都道府県の住民を装って、その場所の教習所で甘々な実習と学科で二種を取り、再び首都圏や関西圏の所属会社へ戻って来るしくみなのです。

本来なら、所属会社近隣の教習所&戸籍上の住居がある都道府県内の試験場で学科を受けるのが常識なのですが、前にも説明の通り近年のドライバー不足の観点から、止むを得ずやっているケースも見受けられます。

ただ昨年になって、国交省からの通達で「乗務員候補生の戸籍上居住地外での二種免許取得については、厳にこれを慎む事」と通達が回った様で、知人の東京無線加盟社では、候補生の教習所をすべて都内に戻したと言うケースが見られるそうです。

因みに、以前のブログでも書きました通り、47都道府県別の2種免許合格率ランキングについてまとめた資料は、今時点で見つけることはできていません(恥)。但し全国レベルの内容については。公開されている平成29年度版運転免許統計によりますと、

普通第二種運転免許合格率(AT・MT込み)=42.1%
      その内   (AT限定)   =44.2%
となっています。

これによると、全国ベースで普通AT限定二種の合格率は、合格者数だけで前年比△16.8%と言う驚異的な増加を示しています。当然受験者数も前年比△23.8%と信じられない程の伸びを示しています。

しかし、合格率だけで見れば
平成28年度=46.8%なのに対し…
平成29年度=44.2%と減少しています。

これは、前に説明した通り国交省の通達で、いわゆる乗務員候補生の地方二種受験が減ったことによる合格率減と見てもおかしくないと、私は見ています。

ところで、先に私は「埼玉県の二種学科は日本一難しい」と言いましたが、これは知人に埼玉県警の交通課に勤めている方から教えてもらったもの。二種に限って言えば、難しいと言われる東京や神奈川の平均的な合格率(確か42~43%との記憶)と比べ、▲5%だと聞かされています。それが本当だとすれば30%台で3人に1人程度しか合格しません。

二種免許についてのまとめ

舐めないように。難しいです

如何でしたでしょうか?タクの運ちゃん何て、黙っていてもなれるぜぇ~なんて時代は、もう過去のモノになってしまったようです。

二種取得は、決して簡単ではない!



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今年6年目の乗務員生活を謳歌している現役タクシードライバー。1967(昭和42)年生まれ。2013(平成25)年日本交通系タクシー会社のドライバーとなる。黒タク資格&スリースター(最上級乗務員)資格所有。