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タクシーは目立ってなんぼ
目立つゆえ「プロなのに」という目で常に見られている
こんにちは。事故を起こしてボロボロになったタクシーを修理工場まで回送している最中に、眠くなってしまい、路肩に駐車して数十分爆睡し、警官に起こされたことがある野の字です。
「車ボコボコですけど、当て逃げされたのに起きなかったの?」
と言われました。
タクシーは、行灯やウィンカーランプ等、一般車よりも装備品が多く、目立ちます。お客さんが道端で見つけやすくなるように配慮されているわけです。
しかし、休憩や回送中など、お客さんを乗せられず、目立ちたくなど無いような時にも目立ってしまうので、少し気をつけなければならないことがあります。
ここでは、タクシー運転手がプロドライバーとして自家用車よりも配慮すべきことについて、説明していきます。
違法駐車も目立つ
都市部では、駐車可能な路肩は絶滅に近い状態となっており、パーキングメーター等を使用しない限り、路上での駐車が非常に難しい状況になっています。また、21世紀に入ってから、放置駐車という概念が幅を利かせるようになり、2006年6月から違反金について詳しく定められ、施行されています。
これにより、タクシー運転手さんの休憩中における自由度が著しく阻害されているのです。駐車場の無い弁当屋などに回送メーターで横付けし、5分ほど買い物に出る、ということも違反行為になっています。
もちろん、違反だからといって必ず検挙されるとは限りませんが、ことタクシーについては、自家用車よりも目立っていることが仇となり、一般歩行者や近隣住民からすぐに注目されます。
- 「タクシーが違法駐車している」
- 「プロなのに道交法も守れないのか」
といった感情を抱かれるのです。この「プロなのに」という五文字がより憤りを強めていて、110番される確率を上昇させているのです。
放置駐車や駐停車違反の処分
さて、実際に駐車違反を犯してしまい検挙されてしまうと、当然反則金等を支払う必要が出てきます。金額や点数などは自家用車と同じです。プロドライバーだからといっても差別はありません。
自家用車と異なる点は、勤め先のタクシー会社にも影響が及ぶことです。事業用自動車、つまり緑色ナンバーが犯した放置駐車、駐停車違反は、警察本部から監督省庁にその内容が通知されるようになっています。
道路交通法第108条の34にその旨が規定されており、108条通報、と呼称されています。「おたくの管轄下にあるタクシー会社の車が、いついつどこそこで違反しましたよ」という連絡が、国土交通省に届くようになっているのです。
108条通報を受けた国交省の関係各所は、違反車両が所属するタクシー会社について記録を残していきます。同じタクシー会社の同じ営業所について、年間で3件の通報を受け取った場合、国交省の下部組織は、その会社に対して文書警告を行います。
ここまでならば実害はほとんどないでしょう。業界紙に会社名が載ってしまい、同業他社のタクシー運転手さんにバカにされる程度です。稀に、敏感な一般企業等がタクシーチケットの契約を打ち切ってきたりして、無線予約が減って売上収入に影響することがあります。
違反が重なると、タクシー運転手さんにも厳しくなってきます
文書警告が行われたのにも関わらず、特に改善がなかった場合は、もちろん処分が厳しくなってきます。警告の翌日からの1年間で、さらに10件の放置駐車や駐停車違反があった場合、10日間の車両停止処分が適用されるのです。
基本的には違反を犯したタクシーのううちの1両が10日間、ナンバープレートを外されて使用不可能になります。なお、100両以上のタクシーを抱える大規模営業所については、10件の違反ではなく、車両数の10%分の件数の違反が発生した場合に適用されます。120両の営業所であれば、文書警告の後、年間12件の違反で車両停止になってしまうということです。
「1両だけか。10日程度、たいしたことねぇや」と思われるかもしれませんが、もちろん多発すれば、どんどん事態は悪化していきます。営業所全体の事業停止、さらにはタクシー会社そのものの事業認可取消など、数百人規模のタクシー運転手さん全員の職が失われてしまう可能性もあるのです。
そのためタクシー会社によっては、駐車関係の違反を惹起したタクシー運転手さんを減給処分とするなど、厳しい対応を行っているところもあります。
タクシーの違法駐車は見つけられやすく、110番されやすく、さらに会社からの処分もあったりして、とてもリスクが高いのです。
路上喫煙も目立つ
タクシー運転手さんは制服を着させられています。少し詳しい人であれば、どこのタクシー会社かもわかってしまうほどです。
路上喫煙や立小便、ゴミのポイ捨て等は、すごく目立ちます。制服から素性が割れてしまうために、すぐにタクシー会社へ苦情が入ることがあります。高校生がガムを吐いたら、通っている学校にクレームが入るのと同じようなものです。
都市部ではポイ捨てや歩行中の喫煙のみならず、路上喫煙そのものが禁止されている区域が多くなってきています。煙草を吸うタクシー運転手さんにとってさらに大変なのは、たいていのタクシーが禁煙車であるということです。
煙草を吸う為には車外に出なければならず、出たところで路上のほとんどで煙草は吸えず、やむを得ず所定の喫煙場所などへ行こうにも、そこには駐車場がなく、路肩に止めれば放置駐車と見做され、と、全くまともに休憩できません。
また、なんとか駐車場付のコンビニ等で煙草を吸うことが出来ても、タクシーに戻ってきたら、「タバコ臭い運転手」というレッテルを貼られます。嫌煙家のお客さんには「禁煙車なのにくさい」と罵られ、愛煙家のお客さんにも「禁煙車だから客は我慢させられてるのに、運転手は吸っていいのかよ」と誤解される、踏んだり蹴ったりな目にあう可能性があるのです。
一番いいのは、タクシー運転手さんになるにあたって、煙草を止めることです。
タクシー嫌いのクレーマーが見ている。
タクシーの違法駐車や運転手さんの路上喫煙は、その視認性の良さが仇となり、すぐ非難されてしまいます。
さらに、むかし心無いタクシー運転手から意図的な迂回走行や乗車拒否をされた経験がある人などが、タクシーを目の敵にしている場合もあります。
毎日タクシーが違法駐車していそうな付近を巡回し、ナンバー等を控えておき、10日分くらいまとめて違反車両について通報してくる人や、個人でビデオカメラを購入して周囲を撮影し、路上喫煙を見つけたら映像を記録して自治体やタクシー会社に送りつけてくる人が、実際に存在しているのです。
そういった人々は、トラックや他の自家用車は全て無視して、タクシーだけを110番通報することもあります。
目立つことが仇に
プロだからこそ、見られ方にも気を使おう
タクシー運転手さんは、運転のプロであり、交通のスペシャリストとして、道路を縦横無尽に走ることができます。路線バスや鉄道では不可能なことで、まさに陸の王者といったところでしょうか。
しかしプロドライバーであるがゆえに、不手際の代償は大きいです。少し気が緩んで惹き起こしたちょっとした不法行為が、すぐに警察や会社に広がってしまい、信用を失ったり、処分を受けてしまったりする危険を背負ってもいます。遵法精神を欠かさないことが非常に大切な職業なのです