タクシー運転手の勤務時間は長いのか?

1日の勤務は長いけど1年がたつの早いその理由

この問題には様々な考え方があるかと思いますが、個人的な意見としてはタクシー運転手の勤務時間は長い、と感じています。

同僚同士で、「1日は長いけど、1年経つのは早いよね〜。」というような会話をよく交わします。

何故、そのような会話になるのか?
まずは、タクシー会社の基本的な勤務体系、勤務時間についてご説明します。会社によって微妙な差はありますが、ほぼ同じと思って下さい。

タクシー会社の基本的な勤務体系

タクシー会社の勤務体系は大きく分けると2つに、小さく分けると3つになります。

以下の事例は私が務める会社のものです。

①隔日勤務(隔勤)

  • 拘束時間18から20時間 (実働15時間、休憩3時間、残業2時間)
  • 月間11出番から13出番
  • 法律で拘束時間が決まっている。残業は営業時間としてではなく、営業所に戻るための時間として考えられています。
補足説明

出番とは乗務日数の事。11出番は月11回出勤日があるという意味です。11出番までは責任出番で、必ず乗らなければなりません。12出番以上は公出扱いになり、公出手当が付きます。

②昼日勤/③夜日勤

  • 拘束時間9から10時間 (実働7.5時間、休憩1.5時間、残業1時間)
  • 月間22出番から26出番
補足説明

22出番までは責任出番で、必ず乗らなければなりません。23出番以上は公出扱いになり、公出手当が付きます。

タクシー運転手に対する拘束時間、及び勤務時間の数字の根拠は、国土交通省のトラック、タクシー/ハイヤー、バス等に対する通達が根拠になっています。

国土交通省の【事業用自動車の運転者の勤務時間及び乗務時間に係る基準】によればタクシー運転手の拘束時間について、

  • 日勤の場合・1ヶ月299時間を超えない
  • 隔勤の場合・1ヶ月262時間を超えないことと
  • 1勤務(2暦日)21時間を超えない

という定めがあります。

これに基づいてタクシー運転手の拘束時間は、

  • 日勤 26日×10時間=260時間
  • 隔勤 13日×20時間=260時間

という計算式が成り立ちます。
上記のタクシー運転手の勤務体系、勤務時間は国土交通省の通達の枠内に綺麗に収まっています。

上記の勤務体系を見てお分かりのように、隔勤を半分にしたのが日勤だという事です。会社的には隔勤を1.0で計算し、日勤を0.5で計算します。

何故、隔勤が「1.0」なのでしょう?

それは隔勤が、タクシー会社の基本的な勤務体系、勤務時間だという事を表しているからです。

収入のために「隔勤」を選ぶ?

求人、乗務員募集、チェッカー

一般の人はタクシー運転手と言えば、朝から晩まで24時間、タクシーを運転しているイメージがあるかと思います。しかし、タクシー運転手には自分の状況に合わせた複数の働き方、勤務時間を選択できることがご理解頂けたかと思います。

昼日勤は売上単価がやや低いので、回数勝負になります。夜日勤は単価が高いですが、長距離を引っ張れるかが決め手になります。

マイペースで稼ぐなら昼日勤、ガッツリ稼ぐなら夜日勤、という感じです。

しかし、大多数のタクシー運転手は隔勤で働く事を選択しています。

それには明確な理由があり、タクシー運転手の給与体系は、どこの会社でも「基本給+諸手当+歩合給」が基本になっているからです。

極端な話、1日走って1円の売上が無くても、基本給と諸手当は貰えますが、それでは到底生活できません。タクシー運転手は歩合があってこその収入なのです。そして「歩合」は「売上」が基本です。

安定した売上を得るには、隔勤という勤務体系が現状では最も効率がいいと言えます。

隔勤は、ほぼ24時間営業しますので、時間帯によって様々なターゲットを狙う事が出来ます。また、22:00〜翌5:00までの「割増」もあり、朝方や夕方などは「無線配車」も多くなります。

それで、多くのタクシー運転手は隔勤のシフトを選択し、毎日15時間以上、走行距離も平均して1日で250キロくらい走ります。多い時には400キロ前後になる事もあります。年間で換算したら、40.000キロ以上走る計算になります。長時間、長距離をお客を探しながら無事故無違反で走り切るのは、相当な気力と体力が必要です。

ここには人によって考え方は違うと思いますが、数多く乗る、長い時間走る、イコール収入が増える、という構図があると言えます。

タクシー運転手の勤務時間とは?

私の会社にはタイムカードがありません。
その代わりにICカードがあり、営業所を出る前に車に差込み、営業所に戻ったら書込みをします。

この間が私の勤務時間になります。
アウトプットされる日報にも、この時間が明記されます。

さて、私はこれで帰れるのでしょうか?
当然、答えはNoです。

まず、1日の売上を清算する「納金業務」があります。これに約30分程。次に、「洗車」があります。これには小一時間ほどかかります。雨天の場合は、その倍くらい必要になります。

ざっくり見て、1.5〜2時間くらいですね。

これはデータに現れない時間外労働の要素があり、サービス残業とは言いませんが、給与に反映されないのは確かです。

ここで最初の質問に戻ります。
タクシー運転手の勤務時間は長いのか?

私の答えはYesです。

拘束時間で考えたら、かなりの長時間と言えるのではないでしょうか?それなりの体力が要求されます。長時間走り切る体力、その後に各種業務をこなし、洗車までする体力。

洗車は結構、重労働ですので手抜きは出来ませんが、サクッと終える要領が必要です。

タクシー運転手が月半分以上は休みは本当か?

タクシー運転手の1週間のサイクルは、以下のようになります。

出番→明番、出番→明番、出番→明番/公休

基本的に、このサイクルで1ケ月回します。タクシー運転手は、隔勤であれば月に12から13回乗ります。

よくタクシーの求人で、「月の半分以上は休み」的な表現がありますが、明番はあくまでも休憩であり、休みではないと言えます。なにせ徹夜明けですので。

タクシー業界にも働き方改革の波

女性や新卒ドライバーも増え業界変化の時

今年から「働き方改革」の影響で、年間に5日間の有給を消化しなければならなくなりました。詳しい説明は省きますが、収入が確実に減るので、現場は戦々恐々としています。

タクシー業界にも新卒者や女性の進出が目立ってきた折、今後の業界の維持・発展のためには、ライフワークバランスも含めて、タクシー運転手の勤務時間や勤務形態を柔軟に考える事が求められているのかも知れませね。



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東京都在住 60歳 タクシー運転手。既婚 子一人。 務めた会社が倒産した経験を2度する。様々な職種を経て、パチンコの店長からタクシー運転手へ。モットーは無事カエル。性格は面倒くさがり屋。趣味は読書とお酒、寝ること