タクシー運転手は稼げるという文句を鵜呑みにしないで

稼ぐなら、東京?

志茂田親子の写真

一般社団法人全国ハイヤー・タクシー連合会の統計調査、「タクシー運転手(男)の賃金・労働時間(平成29年)」によると、東京都のタクシー運転手の平均年収は、418万円となっています。全国平均は333万円ですので、東京都のタクシー運転手の年収が、いかに高いかが分かります。

一般のサラリーマンと比較した場合、国税庁による「平成29年分民間給与実態統計調査」では、全国的な平均年収が男女合わせて432万円となっています。内訳は、正社員のみで男性が548万円、女性が377万円です。

ボリュームゾーンで見ると、300万円未満がトップで31.3%、次に300〜400万円未満で17.5%、400〜500万円未満が14.1%となっています。

ここでも、東京都のタクシー運転手の平均年収が、けっして低いものではないことが分かります。

確かに、タクシー運転手の中には、凄いくらい稼ぐ人もいます。作家の志茂田景樹さんの息子さんは、年収800万円とも言われています。

しかし、これはあくまでも個人レベルの問題であって、平均年収の裏側では多くのタクシー運転手が、中々思うようにいかず四苦八苦しているのが現実ではないでしょうか?

東京は、花の都?稼げる理由があった

東京都のタクシー運転手の平均年収が高い理由は、勿論、「東京」そのものにあります。

人口が多い、大企業が集中している、個人で車を所有している割合が低い、そして、訪日観光客がオリンピックを前にして、日増しに増加していることなどが挙げられます。

一般社団法人東京ハイヤー・タクシー協会の調査によると、東京都でのタクシー利用客は年間およそ3億人いるそうです。1日に換算すると、80万人以上がタクシーを利用していることになります。タクシー1台当たり35人位が乗車している計算ですね。

これでは、東京都のタクシー運転手の平均年収が高いのも当たり前と言えます。

しかし、タクシー運転手の平均年収は、上は600万円以上から下は400万円以下と、バラつきがあります。私の実感としては、年収400万円を行ったり来たりしている層が、圧倒的に多いような気がします。

多くのタクシー会社の求人広告は、「高収入」を謳っていますが、けっして会社が収入を保証してくれる訳ではありません。入社後3ヶ月から半年くらいは給与保証制度がありますが、その後の収入は自力で稼ぐことになります。

なぜなら、タクシー運転手の収入は、基本的に「歩合制」になっているからです。

歩合制とは、売上×歩合率=収入という計算式です。基本的に売上が上がれば、歩合率も上がるので、当然収入も増えます。東京都の場合、60%前後が主流のようです。

完全歩合制の会社もありますが、多くは「AB型」といって「固定給+歩合給+賞与」の方式を採用しています。ただ、固定給だけでは生活できませんし、賞与も売上によって大きく変わります。

要は、売上を上げるために如何にして効率よく仕事をするか、どうしたら売上を安定させられるかが、「年収」に繋がってくることになります。

1000万円プレーヤーも?高収入運転手がやっていること

東京無線

AとBの2人のタクシー運転手がいて、仮に同じ時間を走り、同じ売上で帰って来たとします。2人の乗務日報を見た時、Aは「実車率」が60%で、Bは40%でした。

実車率とは、お客様を乗せた総距離を、一日の総走行距離で割ったものです。率が高いほど、効率が良いことになります。

この例で言うと、Aの方が圧倒的に効率が良い訳ですね。余力があり、まだまだ稼げる余地が残っています。反対にBの方は、ヘロヘロで帰って来てるので、そこでお終いです。

これが一日単位なら差は出ませんが、一ヶ月・一年単位で見たら相当な差になります。

年収600万円以上と年収400万円以下のタクシー運転手の差は、こういうところに出てきます。

実車率を上げる行った先の営業

稼ぐタクシー運転手は、「売上を作る」という考え方をします。時間当たりの目標金額を決めたら効率を最優先にして、今何をすべきかを考え実践します。

以外と、「決まった場所」で仕事をするタイプのタクシー運転手は多いです。「行った先」から拠点に戻るので、ロスタイムが生じます。稼ぐタクシー運転手は、「行った先」で駅やホテルに付け待ちなどして、ロスタイムを無くします。これだけでも、効率は変わってきます。

「行った先」で1回でもいいから「実車」にする、そして頭を得意な場所に向けながら、「実車」の回数を増やす工夫をすることが、効率に繋がることになります。

高速を勧めるコミュニケーション力

また、タクシー運転手には、コミニュケーション力が大事になります。

私の営業所に、「高速たらし」の異名を持つ後輩がいますが、どんなシチュエーションでも「高速に乗りましょう!」とまず提案します。お調子者で愛想もいいので、お客様も苦笑しながら、高い確率で「いいよ」と承諾してくれるらしいです。これで、グンと効率がアップします。

彼の夢は、「1000万円プレーヤー」です…。

タクシーとワークライフバランス

タクシー運転手として普通に真面目にやっていれば、年収400万円を達成することは難しいことではありません。

しかし、タクシー運転手は、「向き不向き」が極端に出る職種の一つだと思います。

どうしても稼げない人がいるかと思えば、一流企業の部課長並みに稼ぐ人もいます。しかし、大方は「まっ、これくらいでいいか」と、マイペースを決め込む人が多いのではないでしょうか。それが平均年収400万円という数字になって現れているような気がします。

要は、ライフワークバランスをどう考えるかだと思います。

タクシー運転手という仕事は、やり方によっては、世間の人が思っているよりも稼げる仕事だと思います。しかし、そこには当然、無理が伴うこともあります。

仕事と生活の両立を考えた時、高齢化していくタクシー運転手の中には、「年収」よりも、「日々息災」に重きをおく考え方があってもおかしくないと思います。

運転手はやりがいはある

年収だけは仕事の魅力は測れない

タクシー運転手は、お客様の人生の縮図を乗せて走ることが仕事なので、やり甲斐も面白さもあります。年収だけでは推し計れないものがあるんですね。

でも、会社がもう少し歩合率を上げてくれたら楽になるのにな、と思っているのは私だけでしょうか?



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東京都在住 60歳 タクシー運転手。既婚 子一人。 務めた会社が倒産した経験を2度する。様々な職種を経て、パチンコの店長からタクシー運転手へ。モットーは無事カエル。性格は面倒くさがり屋。趣味は読書とお酒、寝ること