女性はタクシードライバーとして活躍できるの?

注意点と勤労条件!女性がタクシードライバーになるには?

タクシードライバーはけっして男性だけの職業ではありません。女性の中にも、タクシードライバーの職を希望する人もいますし、現に最近では女性ドライバーの数が現場でも増えています。

ただし、女性がタクシードライバーになるには、男性がタクシードライバーになる時以上に注意するべき点があります。また、女性がタクシードライバーになるには、特異な勤労形態や勤労条件なども最初から知っておくべきでしょう。

ここでは、現役タクシードライバーの私が、「女性がタクシードライバーになるにはどのような注意が必要なのか」を詳しく紹介します。

 

1.女性タクシードライバーの歴史と現状

さてみなさん、日本で初めて女性タクシードライバーが誕生したのは、いつ頃かご存知ですか?

それは、何と1964(昭和39)年。そう、最初の東京オリンピックが開催された年です。ご存知の方も多いかもしれませんが、青野輝子さんというお方。現在東京無線グループの杉並自動車(株)で、史上初の女性タクシードライバーとなり、5年後個人タクシーを開業。2009(平成21)年までタクシーを運転し続けた青野さんは、車を降りるまで通算150万キロを無事故無違反で運行されました。タクシーの仕事を中心とした青野さんの生き様はその後ドラマ化され、現在は講演活動などを精力的にこなしておられるそうです。

青野さんのインタビュー記事がありましたのでご興味ある方はこちら。

さて、青野さんが初の女性タクシードライバーになってから半世紀以上たった今、日本の女性タクシードライバーの現状はどうなっているのでしょうか?

な、何と全国ハイヤー・タクシー連合会の発表資料で、2016(平成28)年現在全国の女性タクシードライバーの総数は、7,292人(前年比6.0%増)となっているのです。ちなみに、全国のタクシー会社で社員に女性乗務員が在籍すると回答した法人は、全体の48.3%。充分に女性が働く職場の選択肢の1つと言えます。

(参照:全国ハイタク連より)

都道府県別で、女性タクシードライバー在籍数日本一は東京都の1,153人ですが、増加率No.1は兵庫県の49.5%(えっ!)。今や、全国的に女性タクシードライバー採用のウェーブが起きているといっても過言ではありません。

しかも、政府は2015(平成27)年2月の閣議決定で、女性ドライバーの数を当時の約6,700人から東京オリンピック・パラリンピック終了後の2021年に14,000人へ倍増させる計画が策定され、各タクシー会社への女性ドライバー採用に向けた具体的な活動(女性用更衣室・浴室整備への助成金支給等)も始まっています。

2.女性がタクシードライバーに最も向いていると言われる理由

では、何故国やギョーカイを挙げて女性タクシードライバーを増やそうとしているのでしょうか?

タクシードライバーという仕事は、旅客運輸業であると共にサービス業です。そういう観点から乗客の中には、私の様なムサ苦しいヲヤジ(笑)が運転するより、年齢を問わず女性が運転してくれる方が良いという声をたくさん聞きます。

JRの職員も窓口に限らず乗務員や駅務員にも最近女性が増えていますが、その理由はタクシーと同じように「女性職員が対応したケースが望ましい」という考えがあるからです。

東京都内では、仕事に行く際に自分の自動車ではなくタクシーを使う女性も結構いらっしゃいます。その殆どの方が、以前電車等で痴漢など迷惑行為に遭い、安心安全な通勤手段としてタクシーを選ぶケースが多く、そうした背景から「女性乗務員のタクシー配車依頼」が年々増えているそうです。

また、最近需要が急増している外国人観光ガイドタクシーでも、男性より女性のドライバーの運転のほうがウケが良かったとのデータもあります。このような社会的背景からも「女性がタクシードライバーに向いている」と言われる機会はとても増えています。ウケが良いのなら、会社も女性をタクシードライバーとして採用しやすいでしょう。

3.女性がタクシードライバーになるには注意すべきことも!

とは言え、日本中すべてのタクシー会社が「女性ウエルカム」という状態ではありません。タクシー会社の多くは、まだまだ男性社会ですから……。タクシー会社によっては、

女性=お断り

という姿勢が見られるところもまだまだあります。「儲かってナンボ」のタクシーギョーカイですから、制約がいろいろと多い女性を積極的に自分達のタクシーに乗せようとはしません。

しかし前述の通り、政府もいわゆる「インバウンド経済効果推進」の一環として、女性タクシードライバー倍増計画(営収倍増計画の方がええんだけど?)を打ち出していますから、少なくとも女性にとってタクシードライバーを「自分の仕事」として選択するハードルは、確実に低くなっています。

では、実際にタクシードライバーになるには、どういう点に注意して就業して行けばいいのでしょうか?

女性がタクシードライバーとして就業する上で注意すべき点

A.出来るだけ自宅から片道一時間以内の会社に勤める

実は女性taxiドライバー希望の多くが母子家庭の方。家族に万一の事があった場合など、すぐ駆け付けられる場所に職場がある事は大事です。タクシー業界に転職する際には、自宅から営業所が何km離れているのかは知っておきたいところですね。万が一の時に会社のタクシーが使えるとは限りませんから、自動車以外の交通手段や「電車なら平均で家まで何分くらいなのか」もチェックしておいてください。

B.面接の際、必ず社内や営業車を見せてもらう

「女性用の更衣室や浴室がある」と説明をされても、実態は男性更衣室の一角をパーテーションで囲っただけと言う事も多く、女性専用の施設が常設されているか?また、そのメンテナンス状態はどうなのか?必ず見ておきましょう。また、営業車内の防犯対策も万全なのか、必ずチェックしておきましょう。

C.勤務に柔軟性があるか必ず聞く

女性は、男性と比べ身体的に不自由な場合(生理など)が多くあります。そうした際、有給休暇や勤務振替……つまり休日に柔軟に対応してくれるのか?必ずチェックしましょう。出来れば、就業を希望する会社の女性の先輩に、相談と称してぶっちゃけトークしてもらうのもいいでしょう。

また、共働き家庭やシングルマザーの子供が小さい場合、子供の送り迎えや病気などで思う様に勤務出来ない事も予想されます。例えば、隔日勤務のみの会社であっても、事情を話しして日勤のみのパートにしてもらえるのか等の柔軟性を聞いてみましょう。

以上三点あげてみましたが、要するに「どうしても女性ドライバーを採用したい」会社には、それなりの事情がありますから、それなり貴女に歩み寄ってくるはずです。あまり自分の都合ばかり押し付けるのはダメですが、ダメ元で聞いた話がOKなら、その会社は貴女にとって最良の職場……転職成功と考えられるでしょう。

4. 女性タクシードライバーになるには?現状と今後の課題

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ウチの会社には、私が「娘」と呼ぶ女性が数人居ます。無論「モーニング娘。」に非ず、ウチの新卒女性乗務員(新卒女性ドライバー)の事です。古い娘……こりゃ「娘」じゃなくて「お局」だな、こりゃ(あっ失礼)……になると勤務3年目になりますが、その「娘」が最近こっそり教えてくれた昨年度の年収では、376万円(税引き前)だったそうです。月給にならすと30万円程度ですね。

歩合が給料に大きな影響を与えるとはいえ、若干25歳の生娘が同世代の女性も真っ青とは驚きですね。娘と同性代の女性の税引き前年収が270~310万と聞いていますから、免許の資格さえ持っていれば、タクシードライバーに女性が応募したがる理由は良く解りますね。

ただ、この話が通用するのは東京や大阪などの大都市圏だけ。地方の女性タクシードライバーの話を聞くと、税引き後月収が10万前半というケースがザラにあるそうです。賞与があるとはいえ、流石にこれでは、きつい。こんな状況下では、質の高い女性ドライバー確保は厳しいです。(月収10万円って……基本給がいくらなのかは気になりますね)

収入の問題に加えて、女性ドライバーには常に密室化する社内で「セクハラ」「暴行」などの危険に晒されています。最近導入が進んでいる「ジャパンタクシー」(写真のミニバン型タクシー車両)では、乗客の快適さに目が行き過ぎる余り、乗務員の安全確保の点で完全な「欠陥車」となったため、女性タクシードライバーが「ジャパンタクシー」を運転中に襲われかけたという話をたまに聞きます。女性黒タクドライバーを、「ジャパンタクシー」ではなく昔ながらのクラウンに乗せているウチの会社の裏事情が、透けて見えそうな話です。

まとめ

女性タクシードライバーの求人は、今や「売り手市場」に!

2016(平成28)年度でも、政府目標の半分しか達成しないタクシードライバーの数。女性タクシードライバー求人市場は、今後益々「売り手市場化」する模様です。

「女性」「介護」「福祉」……女性ドライバーを求める市場の声は増すばかり!

特に「乳幼児の幼稚園&保育園送迎」では、各園がバス送迎の代わりにタクシーを利用させるケースが地方に登場。そういった事情もあり、女性ドライバーを求める声は、日増しに高まるばかりです。

「職場が近い」「女性設備完備」「わがままOK」が女性タクシードライバーへの道

上記三点のほかに「実際女性幹部職員がいるか」なども、就業先選びのポイント。

女性タクシードライバー普及のカギは「都市と地方の待遇差解消」か?

オリンピックなどの国際的イベントを前にして、都内では2020年にも女性タクシードライバーが2000人を突破する予測の一方、地方では需要があるのに1人も雇えないケースも。女性ドライバー拡充へ、政府の政策出動が求められています。



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今年6年目の乗務員生活を謳歌している現役タクシードライバー。1967(昭和42)年生まれ。2013(平成25)年日本交通系タクシー会社のドライバーとなる。黒タク資格&スリースター(最上級乗務員)資格所有。