東京のタクシーは稼げる!!・・・

ただし地理試験に受かればね

こんにちは。東京、神奈川、埼玉を営業区域としている、準大手タクシー会社に勤務していた野の字です。各都県によって、管轄する県警や運輸支局が違いますから、手続きの順序に違いがあったり、書類の様式や枚数に差があったりと、さまざまな特徴やローカルルールが存在しており、しち面倒くさい思いをしたことを覚えています。

さて、俗に「タクシーで稼ぎたいならやっぱり都内だよ、都内」とよく謂われていますが、具体的に「稼げる都内」とは、「特別区・武三交通圏」と呼ばれている区域です。東京23区の全てと、武蔵野市、三鷹市が区域内となります。

「じゃあどうせならそこでタクシーやろう」と当然誰しもが考えますが、そう簡単にことは運びません。特別区・武三交通圏で活躍できるタクシー運転手さんになるためは、事前準備を怠るとまず絶対に受からないという、世にも恐ろしい試験制度、地理試験、というものを突破しなければならないのです。この記事では、こと東京の地理試験について、説明していきます。

地理試験とは?都内タクシー運転手になるためのテスト

地理試験ができたきっかけ

特別区・武三交通圏は、稼げる区域です。日本国の中枢であり人口が多く、眠らない街も存在し、常になんらかの催し物があります。つまり、24時間ずっと移動人口が見込める区域なのです。まさにタクシー運転手さんにうってつけの状況下にあるわけですが、何故この好況を制限するかのように、地理試験という制度が存在しているのでしょうか。

地理試験制度が存在しなかった昭和中期頃、もはや戦後ではない、と謳われ出し、東京は大量の移動人口が発生するようになり、当然、多くのタクシー運転手さんが東京に集まりました。

プロドライバーが全国から集う、となれば良かったのですが、中には素人丸出しで、東京のことは何も知らないけど、とりあえずお客さんを乗せてしまえばこっちのもの、といった軽い気持ちで東京へやってくる者もいました。

彼らは道を知らないので、お客さんを乗せたはいいものの、右往左往してしまい、結局遠回りになって運賃が高くなり、お客さんの要らぬ負担が増えてしまうことにつながりました。

そして次第に、本当は道を知っているのにも関わらず、わざと無知なふりをして、迂回走行でお金を稼ごうとする輩が現れるようになりました。乗客に横柄な態度を取ったりする不届き者も散見されるようになってきます。

これではまずいということで法整備が進み、財団法人東京タクシー近代化センター、現在の公益財団法人東京タクシーセンターが設立され、タクシー運転手さんの登録制度が発足したのです。上述の輩や道がわからない者を根絶やしにするため、登録にあたっては、礼儀や道徳観念の考査と合わせて、地理試験という制度が導入されることとなりました。

地理試験制度は、善良なタクシー運転手さんを守るために作られた砦なのです。登録制度があるからこそ、今日のお客さんは安心してタクシーを呼ぶことが出来るようになっていますから、地理試験は、タクシー売上の維持につながり、ひいてはタクシー運転手さんの収入に結びついているということになります。

地理試験の内容・構成や特徴について

悪質な運転者や未熟な似非プロドライバーを排除するための地理試験とは、一体どのような内容なのかというと、ただの暗記問題が殆どを占めており、しかも全て選択問題です。狭き門と見せておいて、とんでもなく拍子抜けです。

ところで、四面道交差点は、東京のどのあたりにあるのでしょうか。明治通りとはどの辺を通っている道を指すのでしょう。星薬科大学は地図上のどこにありますか。

知ったことか、といったところでしょうが、これら全てをスラスラと答えられるにならなければ、地理試験には合格できません。

地理試験の問題構成は、大問5つの計40点となっています。まず、営業区域全域をカバーする幹線道路・交差点図と、数区程度の地域に範囲を絞った施設関連図、そして問題用紙が配られます。回答用紙はマークシートで、不要な選択肢を含む一択式です。受験者数に関係ない絶対評価で、正答率80%以上で合格となります。

つまり、32点とれば良いということです。選択式ですから、最高に運が良ければ必ず当たります。そう考えるとなんだか楽勝な気がしますが、果たしてどうでしょうか。

地理試験の難しさ~暗記すべきものの質~

地理試験は、単なる暗記問題とは一線を画しており、単語そのものの暗記ではなく、地図上での位置を求めるように出題されています。この道路がどこを走っているのか、その施設が具体的にどのあたりにあるのかを、地図上でしっかり把握しておく必要があるのです。

地点名や道路名等を、ただ覚えても意味がありませんし、例えば、「環状7号線の外側に環状8号線がある」といった程度に位置関係を把握しただけでは、まったく太刀打ちできません。

問題用紙と共に配られる幹線道路・交差点図は、問題に関係のない地点も含め、全ての道路名と交差点名が伏せられていますから、

「井の頭通りの一本北が、五日市街道」、「世田谷城址の隣が、豪徳寺」等という覚え方では、そもそも井の頭通りや世田谷城址が地図上のどこにあるのかを把握していない限り、さっぱり見つけようがないのです。

地図と単語名が脳内で一致していない限り、半分の20点を取ることすらもできないでしょう。32点以上など夢のまた夢です。

地理試験は合格率が公表されない

各地点の名称とその地図上における位置関係を暗記する、というのが地理試験の基本であり、地図に絵を描いてみたり施設の語呂合わせをしてみたりと、多くの暗記法があります。

東京23区と武蔵野市三鷹市の全域というと、途方もない広さを感じますが、過去問題集も販売されていますし、過去問題とほぼ同じ内容で出題されたりするので、自分なりの勉強法を構築して試験に挑めば、決して難関ではありません。

もちろん、勉強していなければほぼ不合格ですし、地図と単語が完全一致しないような生半可な暗記量でも、まず合格点には届かないでしょう。よほどの剛運が必要です。ただし、貨物トラックやバイク便等で、都内を縦横無尽に走った経験があるような場合に、ほとんど勉強しなくても合格できた、という話もあります。

実際のところどの程度の難易度なのかといえば、東京タクシーセンターが合格率を公表していないこともあり、如何とも判断しがたいところです。

しかし、無勉強の人たちはほぼ0%、道路名や交差点名、施設名だけなんとなく暗記できた人でも、ほぼ0%でしょう。

主要な幹線道路名と、三区程度の限定された地域だけ完璧に施設名を把握できている人で20%弱。施設や道路名とその地図上での位置を正確に覚えており、白地図へすらすらと書き込みできるような人がほぼ80%、といったところが実情です。

東京23区で営業しているタクシー運転手は全員合格している

狭き門かどうかは本人次第

都心でタクシーを走らせるために必須となっている、地理試験への合格ですが、これがあるからこそ、タクシー運転手さんの魅力や誇りが護られていることを考えれば、そう捨てたものでもありません。

また、難しい難しいと巷でいわれていますが、必要なのは暗記力のみで、問題も選択式です。いまこの瞬間に23区でお客さんを乗せられるタクシーの運転手さん全員が、無事に合格している程度の試験です。自信がないという理由だけで、受けもせずに諦めるのは、非常に勿体無いです。

試験制度に臆せず、是非、タクシー業界で最も稼げる営業区域でのデビューを考えてみて下さい。



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20代でタクシー業界に飛び込み、運行管理者として業界準大手の会社に就職。タクシー運行管理の他、交通事故処理や苦情対応、本社に異動してからは新人研修等も任されるようになり、タクシー関連業務の多方面で活躍。顔も名も明かせない恥ずかしがり屋