新しくタクシー運転手を目指す前に

日本交通
日本交通株式会社公式Facebookより

こんにちは、準大手のタクシー会社でタクシー運転手の新人研修を受け持っていた野の字です。一風変わった業態ですので、踏み込むのに勇気が必要であったとか、不安な気持ちが強かったとか、やはり研修中には様々な葛藤があったようです。

タクシー運転手になって収入が以前の2倍近くになった方、どうにも性に合わなくて1年ちょっとで別の道を歩むことにした方。色々な方がいらっしゃいましたが、ここでは、タクシー運転手になってみようと考えている方に向けて、自分が相応しいか否か、またいざ応募する前に何をやっておくべきかといった内容を綴っていきます。

ずばり、向く人向かない人~その1.挨拶や返事~

タクシー運転手だからといって、何も特殊なことはなく、まず最も必要な資質が、はっきりしっかり返事が出来る、ということに尽きます。「はい!かしこまりました!」「すみません!わかりません」といった、YES/NOがわかりやすく意思表示できる、ということがタクシー運転手に向くか向かないかの第一歩となります。あまりにも拍子抜けするような内容ですが、一応、タクシーならではの理由もあります。お客さんは声が聞き取りづらいのです。

タクシーも一般車と同様、排気口、マフラーは後方にあります。後部座席周辺で常に車両は振動し、様々な音を出して会話を妨害してきます。さらに、運転席と後部座席の間には、防犯板が設置されているのが一般的であり、プラスチックの板とはいえ、運転手の声はここでも遮蔽されてしまうのです。

発言が不明瞭となると接客どころか目的地への確実な輸送そのものが怪しくなってきます。苦情のリスクが高まってしまうのです。

ずばり、向く人向かない人~その2.恐怖心<冒険心~

生まれ育った街など、自分がよく知っている地域ならば自信を持ってお客さんを迎え入れることが出来ますが、その地域でいろいろなお客さんを乗せているうちに、いつの日か、たまたま遠方までのお客さんをお乗せして、人生で今まで一度も訪れたことがない街まで連れて来られる、といった事態が起こります。

そうなった時に、すぐさま「回送」を入れて馴染みの街まで戻ってしまうか、それとも「空車」のまま堂々と公道を走り回るか。ここに資質の差が出ます。

もしお客さんから手が上がり、自分の全く知らない名前の会社やホテル等へ行けと言われたらどうしよう、わかりませんと言ったら怒られるだろうな、という恐怖から、「回送」を使って街へ引き返す方の未来は暗いです。その方は、新しい営業場所を覚える機会を自ら放棄してしまったのです。青春時代を過ごしたホームグラウンドが大都会で、収入に事欠かなければいいのですが、常識的に考えて、営業区域の隅から隅まで、営業場所を知り尽くしている方が稼げるに違いないのです。

向いている人は、怖いもの知らずの人です。もちろん運転技術がそんな状態ではいけませんが、こと営業場所選びについては、常に新しい発見を捜し求める人の方が、売上の増加も早く、また安定した収入を得ています。

すばり、向く人向かない人~その3.孤独は好きですか~

タクシー車内

タクシーの中に社員は1人、自分だけです。同僚はいません。お客さんをもてなすこともありますが、休憩時間も1人きりです。勿論なかには営業所内で友人を作り、電話で連絡を取り合って一緒に食事をするとか、運転手同士で恋人になって観光地へ逃避行したりとか、仕事してるのか遊んでるのかわからない状況になっている方々もいますが、基本的には、所定の研修を終えたら、出庫後は一人きりで仕事に勤しむのがタクシー運転手です。

この状況に耐えられない人は、早く辞めないと抑鬱状態になってしまったりします。特に独身で50~60代の方に多く見られます。一人でいることが全く苦ではない人、妻などの家族がいる人は大丈夫でしょう。また、孤独に耐えられなくても、元々友人を作るのが得意であるような、人懐っこい性格の人も問題ないと思います。とにかく、一人は凄く寂しいけど解決することもできない、という悩みを車内で押し隠しながら乗務にあたるのは非常に危険です。

タクシー運転手に応募!とその前に~1.大企業へ~

日本交通キッズタクシー
大手は研修も充実しています。

さて、話は変わってここからは、自分がタクシー運転手に向いているに違いないと判断した方に向けて、いざ応募する前に知っておくべきことをお伝えしていきます。

まずは、大手のタクシー会社から目指すべき、との旨を強くお伝えしておきます。大きい会社であれば、大病院や民放TV局等に専用タクシー乗り場を設けていたりします。チケットやタクシー券についても、大企業との付き合いがあったりする関係で、多くの社員が使用してくれる為、売上が安定し易くなります。また、車載装備も充実していることが多いです。

何より、どうせなら最初から規模、実績、昨今の勢い共にナンバーワンである企業に挑んでいった方が、タクシー運転手としての習熟も早くなります。

タクシー運転手に応募!とその前に~2.そのタクシーに乗ってみる~

日本交通の車両展
日本交通公式Facebookより

最初からナンバーワンの企業に行くべき、と前述しましたが、ひしめき合っている大規模タクシー会社は都内に絞ってもかなりの数があります。ある程度の規模を超えた企業であれば、どこもそれぞれの魅力や武器を持っていますので、客観的な数字や歴史的背景に囚われず、自分にとってのナンバーワンを発見してから応募するべきでしょう。

最も効果的なのが、その会社のタクシーに客として乗ってみる、ということです。車内の清掃状況や、古い広告がそのまま貼っていないかをよく確認してみて下さい。素人目線ながらも車載のナビや料金メーターは使い易そうかどうか、また折角ですから運転手さんにも話を聞いてみましょう

応募したいと思っていると言えば、賃金体系等や社内の問題点、他社と比較しての利点等も、親切に教えてくれることでしょう。そこで蔑ろな態度をとるような運転手さんにあたったならば、そのタクシー会社は貴方にとってナンバーワンではなかったということです。

自分と向き合って、合う会社を選ぼう

タクシー運転手の向き不向きという、いざ応募を考えている方の腰を折るような見出しを中心に並べてしまいました。

しかし、自由気ままに走り放題という奔放な職業であるタクシー運転手ですが、その一方で未知の世界へ果敢に挑戦する心と、一人きりで世界を渡り歩く忍耐力が重要です。応募の際は、少しでも自分を守ってくれそうな銘柄のタクシーに出会えるよう、気を使っておくと充実したタクシーライフが送れる筈です。野の字でした。



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20代でタクシー業界に飛び込み、運行管理者として業界準大手の会社に就職。タクシー運行管理の他、交通事故処理や苦情対応、本社に異動してからは新人研修等も任されるようになり、タクシー関連業務の多方面で活躍。顔も名も明かせない恥ずかしがり屋