タクシー会社の外国人採用について現役運転手が現状を解説します

観光立国を目指し、外国人OKのタクシー会社が増えている?

外国人観光客

タクシー運転手にとって外国人タクシー運転手は、AIによる自動運転と同じような脅威になるのでしょうか。

昨今、深夜のコンビニに入ると殆どが外国人スタッフです。近い将来、タクシー運転手も皆んな外国人、なんて事があるかも知れません。

冗談はさておき、日本は「観光立国」を目指しており、来年にはオリンピック・パラリンピックも控えています。年々、訪日外国人観光客数も増加しています。

観光庁の統計では、2018年の訪日外国人観光客は3,119万人で10年前に比べて4.6倍、前年比で8.7%増になりました。日本政府は、今後の目標として訪日外国人観光客を2020年までに4,000万人、2030年までに6,000万人を目標にしています。

当然、タクシー運転手の需要が高まり、人手不足がさらに深刻化する事が予想されます。

そこで、タクシー会社は求人募集に「外国人OK」「外国人積極採用」などの文言を盛り込み、人手不足解消の方策の一つとして外国人タクシー運転手の採用に力を入れ始めているみたいです。

しかし、そこからは、外国人タクシー運転手を戦略的に採用・育成しようと言う熱意はあまり伝わって来ず、場当たり的な姿勢を感じてしまうのは私だけでしょうか。

23人もの外国人が在籍している某大手タクシー会社の内情

日の丸交通観光タクシー
日の丸観光タクシー

唯一、準大手の某タクシー会社が外国人タクシー運転手の採用を本格化し、オリンピックまでに100人に増員する計画を打ち出しました。

資料は古いですが、2018年5月の時点で中国やブラジルなど11カ国、23人が在籍しているみたいです。

これまでの外国人タクシー運転手は、主に在日韓国朝鮮人系か中国人系の「特別永住者」でした。日本で生まれ育っている彼らは、日本語も上手で見た目も日本人と変わりません。

外国人タクシー運転手になるには永住権を取得している事、業務に支障をきたさない程度に日本語に堪能している事、二種免許を所持している事などが条件になります。

永住権を持たない外国人は就労ビザを取得しなければなりませんが、タクシー運転手だけだと単純労働とみなされて、ビザの発給を受けられないみたいです。

そこで、「観光タクシー」など観光業務に従事する高度な人材として採用する事により、就労ビザの取得が可能になるとのことです。先ほどの某タクシー会社は、この手法を使って外国人タクシー運転手を採用してる訳ですね。

一部には、就労ビザの抜け穴を利用して人手不足の解消に利用してるだけだとの批判もあるそうですが、私は、これはこれでありだと思います。実際、英語・日本語の観光ガイドの資格を持っているなど、中々優秀な人材揃いらしいです。

ただ、「観光タクシー」は常時需要がある訳ではないので、通常のタクシー乗務の方が多くなるはずです。会社側は、能力によって観光業務の企画運営などにも参画させるとしていますが、ガイドラインはこれから構築されていく事になるのでしょう。面白い試みだと思います。

私の会社にも外国人タクシー運転手がいますが、在日系か永住権を取得して仕事をしている人が多数派だと思います。就労ビザで働いてるタクシー運転手の話は、寡聞にして聞いた事がありません。

日本語は細かいニュアンスが難しい

私が二種免許取得で教習所通いをしていた時、一緒になったのが見た目も見事な外国人女性でした。「さては、外国人タクシー運転手か!」と思いきや、日本国籍で英語も話せないとの事。外国人客を乗せたら、間違いなく英語で話しかけられますね。どう対応するんでしょうか?

外国人タクシー運転手でありがちなのが、日本語の細かなニュアンスが理解出来ずに戸惑うケースが挙げられます。

「どんつきを、右に」と言われ、何処を曲がっていいか分からず適当に右折して怒られたとか、「しばらく真っ直ぐで、後は道なりね」には、頭の中が「???」となり動けなくなった、なんて話を聞いた事があります。確認すれば済む話ですが、彼らは一様に「日本語は難しいですね」とため息をつきます。

これは、英語圏のお客様を乗せてしまったタクシー運転手にも当てはまる事ですが、外国人タクシー運転手の場合は、ほぼ毎回「外国人」を乗せるのでその苦労は並大抵な事ではないと思います。

2018年度に来日した訪日外国人観光客の73.4%が韓国、中国、台湾、香港などアジア圏からのものです。欧米豪からの観光客は四分の一程度しかいない事になります。

今年の9月には、ラグビーワールドカップがあるので増えるとは思いますが、劇的に変化する事はないでしょう。

このような状況で外国人タクシー運転手を戦略的に採用し、英語圏向けの観光用乗務員として育成するメリットがタクシー会社側にあるかと言えば、私は疑問に感じます。

あくまでも外国人タクシー運転手の採用は人手不足解消のための方策であって、結果的に訪日外国人観光客の取り込みに繋がればいい位の感覚なのではないでしょうか。

私の会社で、外国人タクシー運転手の採用枠を増やす、と言うような話は未だ聞いた事がありません。

外国人タクシー運転手、新卒運転手の増加がタクシー業界を変える

タクシー運転手と言うと、リストラされた中高年組が辿り着く処というイメージがありますが、当たらずとも遠からずでしょう。

しかし、外国人タクシー運転手の中には、数ある選択肢の中からタクシー運転手という仕事を、自ら選んで転職して来る人が多いように思います。

彼らは、高度な教育も受けており、頭の回転も早く、何よりも自分の仕事にプライドと確かな目標を持っているように見えます。

最近ボンヤリとですが、新卒や外国人採用の増加が、この業界を変える起爆剤になったら面白いだろうなと思う事があります。

彼らに共通しているのは、タクシー運転手に対する「負のイメージ」と「既成概念」が無い事です。簡単に言えば、この業界の事を知らない訳ですね。現状に悩むよりも、何とかしようと思う方に重心が傾く事もあるかも知れません。

彼らが経験を積み成長した暁には、それなりの要職に就く事もあり得るでしょう。その時にタクシー業界も大きく変貌する可能性が無い、とは言い切れません。

タクシー業界はひょっとしたら、外国人タクシー運転手を採用する事により、意図せずにイノベーションを遂げようとしているのかもしれませんね?



<広告・PR>
東京都在住 60歳 タクシー運転手。既婚 子一人。 務めた会社が倒産した経験を2度する。様々な職種を経て、パチンコの店長からタクシー運転手へ。モットーは無事カエル。性格は面倒くさがり屋。趣味は読書とお酒、寝ること