この記事の目次
タクシーを続けていける人がやっている稼ぐコツ
1.困った時の、「引き出し」頼み?
私と同年代のベテランは、「困った時には、引き出しが大事」と、よく言います。
タクシー運転手はその日の状況によって、走る時間帯や場所、そしてルートを変えます。
平日はオフィス、土日は繁華街。明るい内は幹線道路、暗くなったら路地裏など。しかし間が悪いと走れども、無人の野を行くが如く虚しく時が流れる事があります。
その時大事になるのが、「引き出し」なんですね。釣り人が、ポイントを変えながら当たりを待つ、と言えば分かりやすいでしょうか?
例えば、終電後は路線の多いターミナル駅を走っていると、お客様の方から駆け寄って来たりします。雨や雪などの、天候が悪い時も同じです。要は、時と場所なんですね。
終電も過ぎた深夜のオフィス街、サラリーマン3人が立ち話。その横に1台のタクシーが、静かにピタリと付けます。 相談が終わったサラリーマン達は、そのタクシーに手を挙げました。運転手は、私の同年代のベテランでした…。
様々なレパートリーを用意しておくと、いざという時に困らない、と言う事ですね。
走り方にも、ちょっとした工夫が必要です。
稼ぐための走り方
- 左車線をキープする
- ガードレールは切れ目を意識する
- バス停の前を通る時には必ず減速する等々。
中には、「実車の後ろに従いてくと、その先にお客様がいる」というような、「?」印のものもありますが…。
あるベテラン運転手が雪の日、住宅街にお客様をお送りした時、最後は急坂でした。彼はバックで、その坂道を登る決断をしました。バックの方が馬力があると思ったからです。見事!成功しました。
タクシー運転手は、お客様を無事に目的地までお送りしてはじめて、仕事が完了です。これも、「引き出し」の一つだと思います。
2.危機管理はが長く続ける秘訣
車には、死角が沢山あります。周囲360度すべてを見る事は出来ません。しかし、プロのタクシー運転手はそれを見て取ります。
「危険予知」です。
常に、「何か出て来るのでは?」と身構え、安全が確認出来るまで動かない事です。
ある雨の日、住宅街を走行中、雨で足を滑らせた少年が目の前に飛び込んで来ました。間一髪で、急停止!
私は、この言葉を思い出しました。
中々難しいのが「無意識の安全確認」です。自然に周囲に目が行く状態で、達人の域です。
「無理!」と言ったら、ベテランに「バカヤロゥ!」と怒られました。
お客様を発見してハンドルを左に切ったら左後方からバイクが。はたまた、お客様をお乗せしてハンドルを右に切ったら右後方から車が。とどめは、後部ドアを開けたら隙間から自転車が。と言うのが、タクシーに有りがちな事故です。
そう、タクシーは停車と発進が、一番怖いんですね。見落としが、原因です。
また、タクシーはお客様を探しながら走るので、脇見運転になります。結構、追突事故があるので、「車間は多めに、速度は控えめに」です。
3.クレームと忘れ物に対する意識を高く持つ
事故や違反と同様、やっかいなのが「クレーム」と「忘れ物」です。時間を無駄にします。
あるベテランに、「クレームになりそうになったら言い訳せず、謝り倒す事だ」と言われました。それで大概、丸く収まります。
続けて、「忘れ物はカサとか、スマホと固有名詞で確認しろよ」との事。忘れ物を発見した場合、お客様に届けに行かなければなりません。
ある時、それが面倒で忘れ物を捨てた輩がいました。これは犯罪に当たるので、会社にバレて解雇です。ドラレコが見ていました。
4.時速30キロで走りお客様がいたらすぐ止まる
ある日、ベテランさんから「時速30キロ以上で走ってて横でパッと、手が挙がったら止まれる?」と聞かれました。「俺はY通りでも、時速30キロで走るよ」との事。Y通りとは、皆んな時速60キロ位で飛ばすような道です。人の迷惑顧みず、ですね。
そして、こうも続けました。
「これは事故防止にもなるんだよ。特に、わナンバーや他府県ナンバーには気をつけな、見かけたら離れろよ」
と。わナンバーとは、レンタカーの事です。
私は何か、走り方の極意を伝授されたみたいで、嬉しかったのを覚えています。
タクシーはある意味、回数を乗せてナンボの世界です。営業の為の工夫とも言えます。
とある日、ベテランさんの車が幹線道路で駐停車の車が多いにもかかわらず、左車線を芋虫の如く超低速で走っているのを目撃しました。駐停車中の車を避けてはもどり避けては戻りで、まるで障害物競争です。「何、やってんだ?」と思った矢先、私の視線には駐車中のトラックの先に、お客様がいるのが入って来ました。その時、「あぁ、こうやって走るのか!」と、鳥肌が立ちました。
さすがに、今でも時速30キロでは走りませんが、停車中の車の横を通過する時は、必ず減速するように心がけています。
5.今の仕事を天職と思って続けること
厚生労働省の平成29年度の調査によるとタクシー運転手の年齢構成は全国平均で、60〜64歳が25.2%、65〜69歳が21.5%、70代以上(80代含む)で9.0%となっています。
合わせると60代以上のタクシー運転手は全体で、55.7%を占めます。
東京オリンピックを控えて、採用担当者の困惑した顔が目に浮かぶようです。
50代は「老後」が、頭をかすめます。「転職」と「老後」、さてどうするか?
ある意味、タクシー運転手は、この条件を満たすことが出来る職業のひとつです。
シフトが柔軟、それなりに稼げる、自分のペースで働けるなど、「稼ぐこと」だけが成功では無く、「細く長く、やり遂げる」事が成功だと考えれば、誰にでもトライ出来る仕事だと言えます。
ベテランさんの中には、「この仕事が、俺の天職だよ」と言う方も、多くいます。
「驥は一日にして千里なるも、駑馬も十駕すれば則ちまたこれに及ぶ」という言葉があります。
年収800万円の運転手が5年で辞めたとすれば、年収400万円の運転手は10年走れば彼の年収に追いつきます。
そんなの稼げない奴のたわ言だよ、と言われそうですが、どうでしょうか?
まずは安全第一
続けていくコツはどの仕事にも通じること
以前、売上を上げる為に休憩も取らず走り続け、バイクを跳ね飛ばした運転手がいました。
あるベテランの口癖です。
「一に安全、二にお客、三四がなくて、五に稼ぎ」。
正に、金言です。