タクシー会社の新人研修担当者が教える続く人の特徴

タクシー運転手さんは、やっぱり中途入社の方が多い

こんにちは。都内のタクシー会社で、毎年50人を超える新入社員の座学研修を取り仕切ってきた野の字です。

一時期、大手タクシー会社が新卒タクシー運転手の採用選考を始めたことが話題となりましたが、依然としてタクシー運転手という職業は、中途で転職してくる方が大勢を占めています。

経歴は様々で、起業して失敗した方など、暗い過去をお持ちの方もいましたが、一方で、取締役まで昇ったけれども新天地で自分の実力を試してみよう、と前向きにタクシー運転手の世界に足を踏み入れた方もいます。若いにこしたことはないですが、50代で異業種から転職されたかたもおりました。

タクシー運転手という職業の大きな魅力として、タクシー車両を1つの店舗と見做し、そして運転手さん自身が店長となってその店を運営していける、という自由度の高さがあります。

そのため、他業種の会社員として要職を任され、辣腕を振るい、皆に必要とされていたような方でも、自分の能力や人生経験を大きく活かせる、と判断して自らのキャリアや高給待遇を放り出し、タクシー運転手へ転職することが、決して少なくありません。

では、具体的にどういった能力がタクシー運転手業に役立つのでしょうか。この記事では、タクシー運転手に向いている人とそうでない人を、きっちりと仕分けしていきます。転職をお考えの方がおりましたら、ぜひご一読ください。

運行管理者が教えるタクシー運転手に向いている人の特徴とその理由

返事の大きさに向き不向きが

無粋ではありますが、声は大きいに越したことはありません。接客業において基本中の基本もいいところですが、結局はここに帰結します。

特にタクシーの運転席と後部座席は、防犯板と呼ばれる分厚い板で仕切られているのが一般的ですから、ただでさえお互いの声が伝わりづらい状態になっています。大きな声ではっきりと、目的地や道順確認などで充分なコミュニケーションをとる必要があります。

上手く気持ちが伝わらないと、少しの手違いが生じた際に、言った言わないの苦情に発展する危険性が高まってしまうのはもちろん、愛想が悪い、態度が悪いタクシー運転手、というレッテルをすぐに貼られてしまいます。

お客さんに嫌われてしまうと、無線で呼ばれることも減りますから、売上の減少、ひいては収入そのものの減少に繋がってしまいます。地声が小さめな人には向いていない職業といえます。

笑顔は二番手

顔を合わせることがあまりない。

接客業の基本にはもう一つ、笑顔、というものがありますが、タクシーにおいては笑顔よりも声量の方が大切です。もちろん元気で明るい笑顔は大きな武器になりますが、声が小さいのにニコニコしていると、何を言っているかわからないのにニヤニヤしている、という状況を招きやすくなり、心象が良くならないのです。

また、走行中のタクシー運転手さんは前を向いているため、後部座席のお客さんからは笑顔があまり見えません。筋肉を駆使して花のような笑顔を作るよりも、声を明るく張っている方が効果的なのです。

冒険心の強い人には向く

知らない道へ車を走らせて、営業できる地域を次々と開拓し、自分の庭を増やしていく、という野心がある人に、タクシー運転手はとても向いています。

タクシー業界には「営業区域」という、いわゆる縄張りのようなものがあり、営業所の所在地毎に、空車でお客さんを探してもいい範囲が決められています。範囲の広さは各地域によって若干の違いはありますが、例えば東京都なら、「特別区武三交通圏」という、23区全てに武蔵野市と三鷹市を加えた、非常に広大な範囲が設定されています。最も広い県域を誇る長野県でも、タクシーの営業区域はたったの4つにしか分けられていません。

タクシー運転手さんは、この広すぎる営業区域を縦横無尽に走り回ることができるのですが、そこは縄張りですから、その全てのランドマーク等を完璧に把握出来ているべきです。

しかし、当然といえば当然ですが、初めて未経験でタクシー運転手に転職した新人運転手さんに、全ての市役所や公民館、病院や大学の位置を把握しろというのは、非常に酷な話です。

では、一刻も早く一人前のプロドライバーとなるために、道順を覚えるにあたって最適な方法は何かといえば、そこへ実際に行ってみる、ということに尽きます。

地図で読む情報と現実の道のりでは視点が全く異なりますから、地図帳と睨めっこをして頭に叩き込むよりも、車をそこまで走らせてみる方が何万倍も効率が良いのです。見知らぬ街への大冒険が、営業の幅を広げ、成績の質を良くし、給料アップに繋がります。

恐怖心の強い人には向かない

大冒険といっても、初めて訪れた街は、土地勘が利かず右も左もわからないばかりか、突然右折専用レーンが現れたり、気がついたら高速の入り口に迷い込んでいたり、と散々な目に遭う可能性があります。

さらに空車のタクシーともなれば、そこでお客さんから手でも挙がれば、お乗せしなければならないのです。お客さんの目的地が、運転手さんも知っている場所だったなら救いがありますが、知らない街の知らない施設であった場合、万事休すとなります。

お客さんに頭を下げて、カーナビを入力してその通りに進むか、道案内してもらう他ありません。

カーナビの弱点は、最短距離よりも安全性や道の判り易さを重視してルート設定する傾向があることです。ナビに従った結果、遠回りとなってしまいお客さんから叱責を受ける可能性があります。

また、稀ですが、道を知らないことをなじってくるお客さんも存在するので、それらを恐れると大きなストレスとなります。

不慣れなエリアで営業できる運転手は稼げる

冒険への関心よりも恐怖心が勝ってしまった場合、生まれ育った地域からなるべく離れずに営業するタクシー運転手さんが誕生します。たまにお客さんの誘導で遠方まで連れて行かれたら、瞬時に「回送」表示を出し、一目散に故郷へ戻っていく、というスタイルに落ちついてしまうのです。

こうなってしまうと、成績の向上や給与の増加は見込めなくなります。その人は、せっかく国から湖のような営業区域を任されているのにも関わらず、その湖畔で足だけを浸し、水遊びをしているだけなのです。広大な売り場面積を与えられているのに、隅っこで駄菓子を二束三文で売り捌いているようなものです。

探究心や冒険心に満ち、道に迷ったりしてお客さんに怒られてもへこたれない、丈夫な心を持っている人が、タクシー運転手に向いています。

もちろん、へこたれない、といっても、なにくそ、とお客さんをぶん殴るような人は駄目です。自分の過ちは素直に認めるという、これはタクシーに限らず全て業種に必要な資質です。

冒険心と声の大きさがあるならば転職も考えてみては?

タクシー運転手業、向いている人には天職です

タクシー運転手は、声が大きく元気よく、物怖じせずに色々な場所へ探検しに行ける人に向いている職業です。なんだか少年誌の大ヒット漫画に出てくる海賊少年が思い浮かびますが、もちろん、大人としての常識はわきまえている必要があります。

逆にいえば、車の運転技術や売上戦略の分析などに対しては、それほど高度な能力は必要ではないということですから、学歴や職務履歴に関係なく、誰にでも門戸が開かれている職業ともいえます。

転職したいけれどなにが向いているか分からないという方、もしちょっとでもお考えでしたら説明会に参加してみてはいかがでしょうか?

多くのタクシー会社で運転手さんの転職説明会を行っていますので、転職を考えている方はぜひ顔を出してみて下さい。



<広告・PR>
20代でタクシー業界に飛び込み、運行管理者として業界準大手の会社に就職。タクシー運行管理の他、交通事故処理や苦情対応、本社に異動してからは新人研修等も任されるようになり、タクシー関連業務の多方面で活躍。顔も名も明かせない恥ずかしがり屋