隔日勤務は2日で、ひと仕事?

拘束時間約20時間って大丈夫?

東京では、タクシーが24時間、365日走っています。

一般社団法人全国ハイヤー・タクシー連合会の調査では平成29年3月末現在、東京都のタクシー台数は法人タクシーが30,848台、個人タクシーが13,788台となっています。合わせて44.636台です。これを総台数で見ると、全国的には20%のシェアを有し、大阪の2.4倍、神奈川の3.6倍となります。

正に東京は、「タクシー王国」と言えるでしょう。それを支えているのが、タクシー運転手です。

タクシー運転手の勤務体系には、隔日勤務と日勤(昼・夜)があります。隔日勤務とは、簡単に言うと1日働いて1日休むことで、ほとんどのタクシー運転手はこの体系で働いています。私の会社では実働15時間、休憩3時間、残業2時間までと定められています。

隔日勤務は、会社側からしたら車の稼働率を上げるのに都合がよく、働く側は稼ぐのに都合がいいシステムになっています。

隔日勤務の拘束時間は約20時間

通常、タクシーは2人で1台の車を担当して1人が乗務して、1人が休みます。そのシフトを回すことによって、稼働率は100%になります。会社にとっては、理想的な形です。

タクシー運転手から見ても、隔日勤務にはメリットがあります。ほぼ24時間営業なので、お客様の様々なニーズに対応できることです。

通常ラッシュ、病院通い、ホテルのチェックアウト、駅や空港の送り迎え、デパートでのお買い物、オフィス街を移動するサラリーマン、飲み会や帰宅などなど、そのニーズは多岐に渡ります。時間と場所、走り方次第では、効率の良い仕事が出来ます。

そして仕事が終わった次の日は、1日休みます。このサイクルを繰り返して、月に11〜13日働く訳ですね。

24時間戦えますか?

非常に効率の良い隔日勤務なのですが、好事魔多しで、落とし穴もあります。

とにかく、「時間が長い」。この一言に尽きます。

ペースがつかめれば、時間の感覚は変わりますが、それはあくまでも「感覚」であって、最後は「気力と体力」の勝負になります。

朝起きて、仕事を終えて自宅に帰るまで、余裕で24時間越えになることもあります。仕事中仮眠を取るとは言えほぼ徹夜の状態ですから、やはり尋常ではありません。

よく明け番を休み扱いにする表現を目にしますが、これは如何なものでしょうか?徹夜明けで意気揚々とお出かけ出来る人が、どれだけいるのか疑問です。

1日の仕事が終わり「さぁ、帰るぞ!」と回送にして会社に帰る途中、意識がカクッと落ちてしまい、気がついたらガードレールに接触していたなんてことが、年に何回かあります。ある時、お客様から「高速走ってる時に、運転手さん寝てたんだよね」と聞いた時には、鳥肌が立ちました。

そういう意味では、タクシー運転手は「辛くて危険な仕事」とも言えます。

続けていくためには売り上げのために無理をしない

隔日勤務の場合、1日の平均走行距離が250キロから300キロ位になります。キロ当たりの平均単価が200円位なので、単価と走行距離を掛けるとほぼ売上高になります。

そこで「走れば、走っただけ売上になる」からと、無理をすることにも繋がります。

あるベテランに「無駄に走っても、ケガするだけだ」と言われました。この方は、稼ぎ頭の一人です。

タクシーの営業パターンには「流し」「付け待ち」「無線配車」があります。基本は、流し営業です。

通常はこのパターンを上手く回して、休憩も取りながら、安全に効率良く仕事をすることになります。

しかし、先ほどのベテランには、もう一枚カードがあります。それは「顧客からの予約」なんですね。お客様から「○○時頃宴会が終わるから、迎えに来てくれない」と、事前に直で連絡が入ります。当然、長距離です。

優秀なベテランの方は、このような「顧客」を何人も持っています。走り回る必要が無い訳ですね。

慣れてくれば手の抜きどころも覚えてくる

人間は「慣れ」の動物で、同じことを7回繰り返すと慣れてしまい、21回繰り返せば習慣になってしまう、と聞いたことがあります。

何となく、隔日勤務には一部当てはまるような気がします。

当然、最初の頃は長時間労働で、売上も上がらず辛い部分にしか目が行きません。しかし、経験を積んで自分のペースがつかめるようになると、あまり苦にならなくなります。ある意味、ルーティンワークになって来るんですね。

時間毎の売上を計算しながら、効率の良い時間帯や場所を探すうちに「ここならお客様を乗せる可能性が高い」とか、「この時間は無理せず、休憩を取ろう」など、自然と身に付いて来ます。

そうなると時間配分が出来るようになり、1日がそんなに長く感じなくなります。

多くのタクシー運転手は、情報の出し惜しみをしないので、優秀なドライバーから情報収集して試してみるのもいいと思います。合う合わないはありますが、試行錯誤を繰り返してその結果成績が上がれば、やり甲斐にも繋がり気持ちも楽になるかと思います。

ある新人さんが研修中、ベテラン班長が横に乗って公道練習をした折、「あっ!この道左折ね!お客様がいるような気がするわ」とのこと、左折してしばらく行くと、そこにはお客様が…。長年の経験と勘が成せる技なのでしょうか?

趣味や家族の時間はしっかりとれる隔日勤務

隔日勤務は、意識すればスキマ時間を作れますし、乗る回数を減らせば連休を取ることも可能です。

仕事の出来るタクシー運転手は、プライベートを充実させることにも熱心です。会社の旅行会やサークルに積極的に参加したり、トライアスロンや山登りなど、自分の趣味に時間を割くことを惜しみません。ライフワークバランスがいいんですね。

隔日勤務は、諸刃の剣と言えます。

辛いのかどうか気持ちの持ち方次第

タクシーを天職だと思い楽しくやっている運転手も多い

長時間の運転は事故にも繋がりますし、肉体的な疲労や体調不良にも繋がります。稼ぐことを考えたら、無理をすることも致し方ないとは思います。後は個々人の価値観の相違、としか言いようがありません。

が、タクシー運転手の中には、「これが天職だ」と思い込み、毎日を楽しく過ごす人達がいるのも事実です。

平凡な表現ですが、要は心の持ちようになるかと思います。

毎日のように、「今日も一日、楽しく仕事してまいります!」と、元気よく挨拶してから出て行く同僚がいます。

羨ましい限りです。



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東京都在住 60歳 タクシー運転手。既婚 子一人。 務めた会社が倒産した経験を2度する。様々な職種を経て、パチンコの店長からタクシー運転手へ。モットーは無事カエル。性格は面倒くさがり屋。趣味は読書とお酒、寝ること