タクシー運転手がよくサボっているように見える理由

休憩時間が足りないと始末書を書かされるのです

公園脇に車を停めて、2〜3人でタバコを吸いながら話をしたり、仮眠を取っているタクシー運転手の姿をよく見かけると思います。

彼らは別にサボっているわけではなく、労働基準法の定めによる「休憩時間」を消化しているだけです。

通常、どのタクシー会社も法の定めに従い日勤は昼も夜も90分以上、隔日勤務は180分以上の休憩を取るようルールを設けています

私の営業所では、ICカードで業務日報が自動印刷されるので、休憩時間が足りないと直ぐに分かります。その場合、始末書を書かされて班長の指導を受けます。

人命を預かるタクシー運転手としては、コンプライアンスは基本になります。適切に休憩を取り疲労を残さないことが、安全につながる訳ですね。

タクシー運転手は職業柄、仕事の仕方、休憩の取り方は自由です。なので、休憩とサボりの境界線が曖昧になりがちになります。そのため周りの人から見るとさぼっているように見えるのも無理がありません。

タクシー運転手はワークライフバランスを自分で決めれる

タクシードライバーの休憩時間、休憩ルールが自由なのはタクシードライバーという職業の働き方が特徴が関与しています。

タクシー運転手の収入は歩合制なので走ってなんぼ、乗せてなんぼの世界です。頑張れば頑張るほど稼ぐことができ、自由裁量をいかに生かすかが、腕の見せ所です。

しかし、自由には自己責任・自己管理が伴います。仕事をするのも自由、サボるのも自由になります。

タクシー運転手は、ざっくり分類するとガッツリ型、マイペース型、考え過ぎ型に分けられると思います。

ガッツリ型は効率重視なので、サボるという言葉は自分の辞書にはありません。やや厄介なのは、マイペース型になります。

マイペース型は、無理せず相応に稼げれば良しと考えてます。ですので、ややサボりぎみになります。けっしていい加減な訳ではありませんが。

ベテランのタクシー運転手にありがちなマイペース型は、気分次第で勤務時間内でも帰ってくることです。班長が「えっ!もう帰ってきたの?」と注意しますが、当人聞く耳を持たず洗車してとっとと帰宅。残されたのは、ピカピカに光ったタクシーだけです。

これもベテランに多くありますが、ホテルや病院で「付け待ち」しかしないタクシー運転手もいます。合法的なサボりと言えますが、走行距離はほとんど出ません。売上も一発狙いなので、日によって極端に変わります。

しかし、これらのタイプは、走り方のコツやポイントを熟知しているので、月でならすと何故かしらそれなりの売上になっているから不思議です。

転じて、新卒組に時折見られるマイペース型が、時間をフルに使って道を覚えたり営業の仕方を習得しようとする気合いが足りないのか、適当に走ってさっさと帰って来るパターンです。運転技術も未熟で道に不慣れなので致し方ない部分もありますが、給与保証期間が3カ月あるので甘えが出ていると先輩の目にはうつるかもしれません。

タクシー運転手を続けたいなら考え過ぎないこと

タクシー運転手という仕事は、考え過ぎるとろくなことがありません。
何故かと言うと、毎日失敗の連続だからです。

お客様とのトラブルが、トラウマになってしまった新卒の新人がいました。彼は、お客様を乗せたくないので、営業所を出たら一目散に東京と千葉の県境を目指します。そして県境に架かっている橋を一日かけて、行ったり来たりするのが日課になりました、走りながらサボってる訳ですね。

サボりの定番はやはり居眠りでしょう。日勤のタクシー運転手で、出庫して午前中は走りますが昼食を食べたら必ず同じ場所に行き、たっぷり3時間以上睡眠を取る人がいます。勤務時間の半分近く寝ていることになります。それが毎回なのでサボりの確信犯と言わざるを得ません。

タクシードライバーは休憩時間、場所は自由ですが、決してさぼっていい訳ではありません。会社は、一人のタクシー運転手を育成するのに、結構な費用と時間をかけています。大体の会社で入社してから実際に乗務するまでに1月カ半から2カ月位かかります。

費用も、研修期間の手当・二種免許の取得費用・給与保証制度など、一人当たりに相当のお金を使っています。

タクシー会社は先行投資を行っている訳です。なので、元を取り戻すために、タクシー運転手には稼いでもらわなければなりません。よほど重大な案件でもなければ、サボった程度では解雇されることはあり得ないと断言できます。

歩合なのでさぼれば生活が成り立たない

東京無線

決まった休憩時間を守ることは、法令で定められていることであり、会社のルールです。

所定の休憩時間を大きくオーバーするということは、ルール違反でありその分売上が減ることを意味します。

しかし、大方のタクシー運転手は、「俺はこれくらいの給料でいいから、体を労ってるだけだよ」と言うと思います。当然、その時の体調もあるので嘘ではない訳です。

ここに、休憩なのかサボりなのかの線引きの難しいところがあります。会社もそこは心得ていて指導はしますが、度を越さない限りあまりうるさくは言いません。

要は、会社側からすればそれなりの売上があれば良しですし、タクシー運転手側からすれば生活が成り立てば良い訳なので、そこで折り合いがつきます。

タクシー運転手は、まだまだ中高年や高齢者が主力の世界です。「今の若い奴らは、稼ぐことしか考えてない」と、ベテランのタクシー運転手は口を揃えて言います。

適度にサボって、それなりに稼げれば何も文句はないという働き方は、ひょっとしたら理想的なスタイルなのかも知れません。

結局は、自分がどれだけ稼ぎたいかによってタクシードライバーとしての働き方も変わってくるものでしょう。しっかり稼ぎたい人はさぼらずに努力を続けるある程度生活できるだけの収入が欲しいという人は、適度にさぼりながらしっかり働くところは働く、その程度の判断はタクシードライバー本人が行うものでしょう。

会社のルールや規定だけは守るように働けば問題ないのではないでしょうか。



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東京都在住 60歳 タクシー運転手。既婚 子一人。 務めた会社が倒産した経験を2度する。様々な職種を経て、パチンコの店長からタクシー運転手へ。モットーは無事カエル。性格は面倒くさがり屋。趣味は読書とお酒、寝ること