タクシー運転手の業務は運転だけ?

転職を考えるなら知っておきたい運転以外の業務

タクシー運転手さんの仕事は、お客さんを目的地まで安全に送り届けることが目的でその対価としてお金を貰ってくる、というものです。もちろんこれは、全てタクシーの車内で行われます。

すると、タクシーの中にいる時にこそ、タクシー運転手さんは仕事をしている、ということになるわけですが、だからといって車の外では何の仕事もしなくてよい、というわけではありません。残念ながら、タクシーを運転していない時にも、タクシー運転手さんには仕事があるのです。

ここでは、タクシー運転手のメイン業務である運転や接客等の仕事から離れ、車外や営業所内で行われる、ちょっとした仕事たちについて、お伝えしていきます。

タクシー運転手の運転以外の4つの仕事

 

1.日常点検
2.出庫前点呼と帰庫時点呼
3.帰庫したら、洗車
4.明番集会への出席
 

1.日常点検

タクシー運転手さんがやらなければならない仕事の一つに、出庫前の点検があります。

「は? そんなもん、整備士かなんかがやってくれるんじゃないの!?」というご意見はごもっともですが、タクシーの点検整備について、法的に義務付けられているのは三ヶ月に一度のものだけです。しっかりした会社でも、月に一回程度しかタクシーの点検整備はやらないのです。これでは車両の安全性に若干の不安があります。

タクシーは、一日に200km近く走るのが普通です。つまり、一ヶ月に6000kmも走ります。タイヤの磨耗やエンジンオイルの汚れなど、コンディション悪化の早さは一般車の比ではありません。月に一回の点検では充分にカバーできているとはいえないのです。語弊を恐れずに述べれば、タクシー運転手さんは整備士の腕に頼りきることなく、自分自身で、出庫前に車の状態を確認しておき、万全を期す必要があります

点検といっても、専用の点検記録票を片手に、車を見て回るだけです。タイヤのスリップライン、エンジンオイルの色、ウォッシャー液の有無の他は、車両を360度見回して、ライトのヒビ割れや小キズの有無を確認します。

もしヒビ割れがあれば、運行管理者に報告をして、乗り換え、もしくは整備士の手が空いていれば、その場で修理されることとなります。小石のハネっかえり等、少しのへこみや小キズは日常茶飯事ですが、気付かずに出庫して、帰庫後に他の従業員から咎められて、自分の責任にされてはたまった物ではありませんので、小キズ等がある場合も、点検記録票にその旨書き記しておきます。

点検項目全てを見終わったら、いよいよ、出庫前の点呼です。

2.出庫前点呼と帰庫時点呼

タクシー運転手さんは、運行管理者の点呼を受ける必要があります。タクシー事業者は、出庫するタクシー運転手さん全員に対して、出庫前の点呼と、アルコールチェック帰庫時の点呼を行うよう、国からきつく義務づけられているのです。

別に囚人の呼び出しではありませんから、「番号!」などということはありませんが、基本的な接客言葉の復唱を行っている会社はあるようです。「どちらまでですか!」「かしこまりました!」「お忘れ物をないように!」等と、出庫前に皆でやるところもあるようです。

また、出庫前点呼は、昨日の交通事故状況や接客トラブル、本日の通行止め情報やイベント会場の送迎依頼など、重要な情報からそうでもない小話まで、正しく伝達される貴重な機会となっています。

一方、帰庫時点呼は、一回の乗務を全て終えたタクシー運転手さんが、事務所に売上の納金や日報の提出等を行う際に、営業中の特異事案や車両不具合の有無について、運行管理者に報告を行うものです。

もちろん、苦情や事故、故障などの事件があれば、ここで必ず詳細に報告する必要があります。

3.帰庫したら、洗車

タクシー運転手の車外における最も大変な仕事が、洗車です。
洗車は、なんと毎回の出番で行わなければなりません

ようは、落語家が次に出る演者のために座布団を引っくり返して退場する、というのと全く同じ意味合いで、次に乗務する人のために車を掃除するものですが、全ての営業を終えた後の洗車作業ですから疲れているときは少し大変です。

洗車については、別の記事で詳細に記述していますので、よろしければ是非ご覧ください。

4.明番集会への出席

タクシー運転手がやらなければならない運転以外の仕事で、最も大きいイベントが、この明番集会への出席です。月例明番者教育、などと呼称されることもあります。

月例、ですから、ほとんど毎月一度、営業所のタクシー運転手さん全員が、事故や違反、苦情などについての講習を受けなければならないのです。(法律で決まっている)

タクシー運転手への指導監督義務は、国土交通省によって厳粛に規定されています。タクシー運転手がいかに自由度の高い仕事であるとはいえ、サービス業としての適切な対応を研究したり、お客さんや交通弱者の安全を守るために危険予測の意識を高めたり、といった鍛錬を欠かすことは許されません。

しかし、月例教育制度といっても、たいていの場合、明番集会の主催者は営業所の所長で、講師も所長です。つまり、全てがその事業場内で行われますから、一般企業に当てはめれば、月に一回、社内で全員参加の会議が開かれる、といった雰囲気のものになります。

たまに、所轄の警察署から交通捜査課の担当者を招いてみたり、タクシーセンターから講師を呼んでみたり、といった催し物が行われることもあります。

仕事といっても、乗務の傍らにあるものですから、明番や公休の兼ね合いがあり、全てのタクシー運転手が一同に会することはまず不可能です。明番集会は多くの事業所で二、三日に分けて開催されており、タクシー運転手は、どれか好きな日に顔を出せば事足ります。

点検、点呼、洗車、そして明集の手当は?

就職面接の際はこれらの仕事の対価があるのか確認しましょう

タクシー運転手さんの細々した仕事群について述べてきました。ここで気になるのは、給与の問題です。

タクシー業界では、お客さんからお金を貰い、その一部が自分の収入になる、という制度の会社が殆どを占めています。すると、この記事で述べてきた運転以外の仕事については、給料はどうなるのでしょうか?

点検や洗車をしても、料金メーターは一切動いてくれませんし、はたまた明番集会、略して明集などは、ただじっと座り、時間を無駄に過ごしているだけです。

しかし、どれもこれも会社から義務付けられた、れっきとした仕事なわけです。その対価は、どのような計算になるのでしょうか。

実のところ、手当を支払っている会社と、そうではない会社が存在しているようです。これからタクシー運転手さんへの転職を考えている場合は、ぜひ注目してみてください。



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20代でタクシー業界に飛び込み、運行管理者として業界準大手の会社に就職。タクシー運行管理の他、交通事故処理や苦情対応、本社に異動してからは新人研修等も任されるようになり、タクシー関連業務の多方面で活躍。顔も名も明かせない恥ずかしがり屋