タクシー運転手は体を酷使する

罹っているとドライバーになれない病気・ドライバー人生を縮める病気がある

タクシー運転手の仕事に従事する人のなかには、何らかの病気にかかっている人も少なくはありません。

例えば実際に、「高血圧」「高尿酸症(痛風)」「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」に罹患し、継続的に治療を受けているというドライバーもいます。

不規則な勤務やそれに伴う生活習慣の乱れから、他業種の就労者と比べタクシー運転手は病気に罹り易いと言われます。

しかし、常に人命を守り法令順守の元で安全な運転を行う上で、健康に問題があるドライバーが従事する事は、昨今問題となっている重大事故を誘発しかねないリスクを拡大させることになります。

今回は、タクシー運転手に従事したい方や既にタクシー運転手として活躍しておられる方が、気を付けるべき病気についてお話したいと思います。

タクシー運転手に応募する際に確認しておくべき病気

日本交通

引用:日本交通株式会社公式ホームページ

日本交通グループのHPには、タクシー運転手として就労したい方に対して「持っていると不採用になる確率が高い持病や健康問題」の項目が設けられています。

これによると…

  • 心臓疾患(心臓に直接間接関わる疾病)
  • 糖尿病(Ⅰ型Ⅱ型問わず・疑いありでも引っ掛かる)
  • 肝硬変(検収時にはB型C型肝炎も含むと言われた)
  • 精神疾患(うつ・統合失調症など)

に罹患している方は、治療中を問わずタクシー運転手採用に応募しても、門前払いされるケースが殆どだとされています。

当然ながら、こうした疾病は、タクシーの旅客運行に際し、重大な支障を起こしかねないと言われているのです。

加えて、こうした事実を面接等で隠ぺいしてタクシー運転手に従事し、後に事故を起こして露見した場合、懲戒処分(懲戒免職)や事故に対する損害賠償を請求される事になり兼ねません。

しかし、こうした疾病に罹っていたとしても、タクシー運転手になる事を諦めることはありません。

もし、対象となる疾病に罹っているとしても、まず掛かり付けの医療機関で「タクシー運転手として従事したいが問題ないか?」と相談してみましょう

半々のケースですが「治療を続けていれば、タクシー運転手として従事して問題ない」と判断され、診断書を書いてくれます。

そして、診断書を持参してタクシー会社に応募し、面接の際に罹患の事実を伝えた上で「医療機関から診断書を貰っている」と開示して下さい。

各タクシー会社には掛かり付けの産業医が付いていますので、採用担当者は産業医に診断書を見せ、採用の可否について検討します。診断書が出ていれば、大概のケースで産業医はOKを出しますので、採用される可能性が高まります。

但し、各タクシー会社は安全面の担保を高める意味から、採用条件として「日勤乗務」or「勤務日数を減らす」などを言われるケースがあります。

とは言え、本来なら安全担保の上から乗せられない貴方を乗せるのですから、この程度の条件は受け入れましょう。2~3年無事故無違反で乗り続けられれば、大概通常勤務で乗る事にOKが出ます

 

タクシー運転手として従事してから気を付けるべき病気・ケガ

腰痛・ひざの痛み

さて、実際にタクシー運転手として従事する中で、気を付けなければならない病気やケガがあります。

一般の社会人にとっても、病気やケガは仕事を続けられなくなる等リスクがありますが、タクシー運転手にとっては「即クビ」とも言われかねない「命取りの病気・ケガ」が結構あるのです。

その代表例が「腰痛・ひざの痛み」と言われています。

タクシーのみならず、交通事業に携わる人にとって「腰痛」は付き物。

中でもタクシー運転手は、勤務の性質上ほぼ一日座って働くため、腰痛を患う確率が高いと言われています。

車両運転手と腰痛の関連に関してまとめた滋賀医科大学のレポート

加えて膝の痛みは、腰痛同様タクシー運転手の職業生命を奪う恐ろしい病気(ケガ)と言えます。

膝の痛みを患っているタクシー運転手は、アクセル・ブレーキ操作に支障を生じる時がたまにあり、定期的に形成外科の治療を受けている人もいます。

高血圧と心臓疾患を抱えての運転は危険が伴う

一方、外科系以外の病気で、タクシー運転手にとって恐ろしい病気と言われるのが「高血圧」「循環器疾患(含む心臓疾患)」「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」と言われています。

「高血圧」「循環器疾患(含む心臓疾患)」に関しては、古くから「タクシー運転手殺し(の病気)」と呼ばれています。
前章でお話した通り、心臓疾患に罹患すると、タクシー運転手にはなれません。同様に、タクシー運転手に従事後「心臓疾患を含むか関連する循環器疾患」を発症するケースがあります。

この場合も一時乗務は禁止とされ、指定医療機関で治療の上、産業医から「治療継続で乗務に支障なし」と診断されるまで乗れません。

「高血圧」も、最悪の場合「くも膜下出血」や「動脈・静脈瘤」の引き鉄となる為、発症した場合「治療により医師から許可が出るまで乗務禁止」とする会社が多い様です。

高血圧と健康との関連について案内した「ドライバーズワーク」のHP

ウチの会社の場合、定期健診の場で血圧が上=130以上・下=90以上の場合は即乗務停止となり、治療で医師から許可が出る迄は、内勤補助をするか、治療期間を有給で充当し自宅待機するの何れかを選択する事になっています。

自覚がないから恐ろしい睡眠時無呼吸症候群

そして、今一番タクシー運転手にとって最も恐ろしいのが…「睡眠時無呼吸症候群」です。

自覚症状が無い上に、突然眠気が襲って操縦出来なくなる…その結果はどうかと言えば…

⇒関越道ツアーバス事故の号外

今世間を騒がせている自動車事故の多くの原因が「SAS」によるものと指摘する研究者も少なくありません。

⇒SAS患者が交通事故を引き起こす確率に関する資料

一昔前ですといわゆる「メタボリック症候群」に付随した病気(要するにデブの病気…悪かったな!)と呼ばれていましたが、最近の研究で太った人&痩せた人を問わず「気管が狭まった状況にある人が罹患する病気」と言われています。

  • 就寝時に「常習的」にいびきをかく人
  • 昼間に強い眠気に襲われる人・実際気付かず寝てしまった人
  • 時々意識が途切れたり、記憶が欠ける人

こうした事が思い当たる人は、間違いなく「SAS」に罹患している可能性があります。

当てはまる人は、タクシー運転手でなくとも耳鼻咽喉科に設置されている「睡眠時無呼吸症候群外来」を尋ねられることをお勧めします。

⇒全国の睡眠時無呼吸症候群外来が探せる「無呼吸ラボ」

睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、「高血圧」等と同じ投薬治療で治す方法と、CPAPと呼ばれる「経鼻的持続陽圧呼吸療法」があります

私もCPAPをやっていますが、鼻に装着したマスクに圧を掛けた外気を送り込み、就寝中に気道が閉まるのを防ぐ装置を継続的に着けて、気道を常時開くよう矯正する治療法です。

⇒CPAP治療とは?(帝人ファーマ㈱のHPより)

医師から「CPAPを外しても問題ない」と言われるまで続けるのですが「早くて大体3年位が目途」と主治医から聞いた事があり、結構長丁場の戦いとなります。

タクシー運転手の怪我・病気のまとめ

一般の労働者より体調管理が大事な仕事

その他、タクシー運転手の職業生命を縮める病気やケガはありますが、今
回は産業医のセミナーや実際自分が掛かった病気として「最も注意すべ
き」と注意喚起があったモノを選んでご紹介しました。

他の業種と異なり、変則的&不規則な就労を強いられるタクシー運転手
は、一般の就労者以上に体調に気を付けねばなりません。

タクシー運転手への転職を検討している方も、既にタクシー運転手として活動されている方も、一度健康診断を受けるなど自身の健康状態を確認すると良いでしょう。

 



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今年6年目の乗務員生活を謳歌している現役タクシードライバー。1967(昭和42)年生まれ。2013(平成25)年日本交通系タクシー会社のドライバーとなる。黒タク資格&スリースター(最上級乗務員)資格所有。