営業収入と歩合率(額)の関係は?

どんなシステムなの?他業種よりいいの?

これまでタクシー運転手の数々の仕組みを御紹介しましたが、今回は最も皆さん…特にタクシー運転手に転職したい人…が興味のある「タクシー運転手の歩合賃金」の仕組みを御紹介したいと思います。

既に御紹介した通り、タクシー運転手の賃金体系には3種類あります。

  • A 型賃金=いわゆる固定給タイプ
  • AB型賃金=固定給+歩合給混在タイプ(4社系・大都市圏の大手法人系は殆どこれ)
  • B 型賃金=完全歩合制(個人タクシーの賃金システム)

皆さんが最も興味がある「歩合制」という言葉…例えば、金融業界(銀行【主に投資関係】・証券・保険など)では良く効く賃金システムの言葉です。

私もその昔、某保険会社で営業をやった経験があり、商品別&販売額別に「歩合」が設定され、月々の基本給に「販売手数料」と言う名の「歩合給」が支給されていた事を思い出します。

では、タクシーギョーカイの「歩合賃金」の考え方やシステムについてお話して行きましょう。

1.タクシー運転手の「歩合給」に関する考え方とは?

そのそも、何故タクシー運転手の給与システムに「歩合給」が入れられたのは、どういう経緯からでしょうか?

戦後本格的に始まったタクシー事業…でも当時の給与システムは、いわゆる「完全歩合制(フルコミッション)」でした。当時は、今で言う足切り…ノルマ…を設定され、それが達成出来なければ、帰庫後に延々お仕置きを食らった挙句、「もう一度稼ぎ直して来い!」と街に出される始末だったそうです。それだけに、ドライバーは「稼ぎ優先」。当然運転は特攻機顔負け!!

当時のタクシーの事を、人々は「神風タクシー」と呼んで恐れ、特別に急ぐ要件や冠婚葬祭のハイヤー以外は利用しない様になり、次第に利用客が減ったそうです。

(当時の神風タクシー【不良タクシー?】の有様を紹介した中日ニュース画像)

こうした事に危機感を抱いた経営側が、これまでのフルコミッションに代わり一定の賃金補償を行い、かつドライバーの勤務意欲向上を目指して導入されたと言われるのが「歩合給」だそうです。
歩合給導入の目的として

  • ドライバーの生活安定を図り、良質な接客と運行をするドライバーを確保する
  • 不明瞭と税務当局から指摘を受けたドライバー賃金の可視化
  • やればやる程賃金が上がるシステムを挿入する事で、ドライバーのやる気を促す

を目的に、各社試行錯誤しながら導入を進めて行ったとされます。当時の法人タクシーの傍若無人ぶりを逆手に取り、いわゆる「認定白タク(個人タクシー・ナンバープレートが白いことが由来)」参入を認めざるを得なかった法人関係者としては、競争激化の中でドライバーの生活確保も仕事の内と考えるきっかけになった様だと…は、ウチの会社の古株の話です。

2.営業収入と歩合給の関係は?

営業の途中、他社の車の車体や後部ガラスに…

乗務員大募集、最大歩率65%!!

などと言うドライバー募集広告を良く見ます。「よく稼ぐドライバーさんには、営業収入の65%を賃金として支払いますよ!」って意味です…考えると羨ましい~。ウチの会社はAB型ですが、計算した結果歩率は53~55%(除く深夜&残業手当)なんで、思わずヨダレが出そうな広告ですね。でも…
ヲイシイ話には、必ずウラが一杯ある!

と思った方が無難です。歩率が極端に高いとドライバー広告で打って来るのは、東京エリアで言えば、東京無線グループ加入社チェッカー無線グループ加入社&独立系の中小タクシー会社が結構多いです。じゃぁ、それら企業は高い歩率を払えるだけ実力を持っているのか?

答えは…ブッブゥ~×(だめぇ~××)

です。

知人にチェッカー無線系でフルコミ制のタクシー運転手をやっている人が居て聞いてみましたが、最高の歩率(そこの会社は63%)を貰うには、色々規定があるそうです。

  • 一ヶ月の勤務シフトを「変更せず」満勤すること(14勤務なので通算28日!)
  • 一ヶ月の営業収入が、税抜75万円を超える事(チェッカーグループでは余りに厳しい)
  • 一ヶ月の営業で、無事故&無違反&タクシーセンター違反及びお客様からの実名クレームが無い事(まぁ当然)

仮に上記の条件で、一ヶ月間全く問題なしに勤めて、営業収入が税抜80万あった場合、

80万円×63%=50.4万円

が税引き前支給額となります。そこから社会保険料・住民税&会社によってはスイカ等の利用に際してのシステム利用料(今はドライバーからシステム使用料をとらない会社も多い)や社内積立金(いわゆる退職金代わり)など額面賃金の20%が引かれたとして、実際ドライバーが手に出来る賃金総額は…

50,4万×80%=43.2万円

これが歩合制賃金の実態と言えます。一見すっごぉ~く羨ましい金額ですが、LPG(液化天然ガスのこと。タクシーやトラックなど業務用車両の多くはガソリンではなくLPGで走ります。コスパがよく排気ガスがクリーン)代や場合によっては自賠責保険費用を相番と折半と自腹切りのケースも多く、決して高い賃金とは言えません。昔は会社から車だけ借りて、保険も燃料代も自腹という時代もありましたが、今そんなドライバー任せの会社は減ってきています。

これに対して、ウチの会社の様なAB型賃金を採用しているタクシー会社では、考え方が根本から違います。

なぜチェッカーグループでは1ヶ月75万超えが厳しいのか

都内では1か月約90万件の無線利用の売り上げがあります。そのうち約70万件は日本交通、KMタクシー、東京無線が支配し、残りを他の会社が分け合う構図があります。

無線客は高額利用者が多く、ここをいかに獲得するかが売り上げ増につながりやすいのです。

私の場合

ウチの会社の実例で紹介しますと、一ヶ月で私は平均税抜きで85万位営業収入を得ます。賃金算出の最初の段階で、まずここから必要経費が差し引かれます。LPG代(ウチは毎出番ガスを満タンにして送り出して貰える為)・車両リース代・保険代など車両運行に必要な経費をまず差し引きます。その次に、残額を社内独自の計算式で歩率を割り出して歩合給を確定し、会社負担とされている基本給(でも実質は違うんだけどね)や法令で支給が定められている深夜手当・残業手当を加算し、額面支給額を決定します。

その後、税金・社会保険料など必要な控除を受け、最終的に37~39万の間で実費支給されるのが私の月々の給与です(あっ、私の身銭バラしちゃった)。

これとは別に、年3回のボーナスがあるので、大体私の年支給ベース総額は…
おしえてあげないよ(じゃん!(笑))

3.どんな歩合システムがあるの?

タクシー運転手の給与で、歩合給が占める割合は非常に大きいです。私の場合も、税引き前支給総額の大体半分近くを占めます。

前述の通り、完全歩合制(フルコミッション)を導入しているタクシー会社は、少なくなったとはいえまだかなりの会社で存在しています。

またAB型賃金を導入している会社の中には、一ヶ月の実車走行距離をポイント化し「精勤率」として営業収入とは別に手当化している会社もあるそうです。

いずれにせよ、ドライバーを怠けさせない様にする努力が、色々とあるみたいです。

4.他の業界と比べると、タクシー業界の歩合って良いの?

以前私は保険業界で働いた経験があると話しましたが、その際も商品を販売すれば内容や契約金額によって歩合給が加算される給与体系でした。今のタクシー運転手と比較すれば、天と地の差程ありましたね。

でも金融系の歩合給は、契約が取れればそれこそ「セレブ」な生月が出来る半面、契約にあり付けない時は生活保護同然の暮らしに追い遣られます。

無論タクシー運転手の歩合給も同じで、努力して営業収入を積み重ね、足切り(ノルマ)をクリアした者には支給され、適当にごまかしながら基本給だけもらおうとするドライバーには、基本給すらカットしようとする動きは見られます。タクシーギョーカイは、ビックリするほど歩合給はもらえないにせよ、真面目にやってれば誰でももらえる様にはなるといえます。

まとめ

歩合給が生まれた経緯

タクシー運転手の「歩合給」は、「完全歩合制(フルコミ)」によりドライバーの質が落ち
た事に対する反省の意味を込めて導入されたもの。真面目に働くドライバーが報われるように
色々な仕組みが取り入れられている。

高い歩合給の会社は要注意

営業収入が高い程、歩合還元率は高くなる。しかし、高い歩合給を支給するうたい文句の裏には
相当厳しいハードルが待ち受けている事も忘れずに。AB型給与では、ドライバーに掛かる経費
を差し引いてから、歩合率を決定する考え方が大半。

基本的にまじめに仕事をしていれば大丈夫

タクシー会社の数だけ歩合率の決め方があると言われるが、最近は収入ベースだけでなく、日々
どれだけ頑張っているか(精勤率)を数値化して、歩合給に加算する動きもある。

他のギョーカイと比べると、タクシーギョーカイの歩合給は給与全体に占める比率が高い割に、
ビックリするほど支給される訳ではない。しかし、他のギョーカイの様に支給されないケースは
少なく、真面目に仕事をしていれば誰でも普通に貰えるようになる。

 



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今年6年目の乗務員生活を謳歌している現役タクシードライバー。1967(昭和42)年生まれ。2013(平成25)年日本交通系タクシー会社のドライバーとなる。黒タク資格&スリースター(最上級乗務員)資格所有。