運転以外の仕事もちょっとあります

接客、掃除、金銭管理についてご紹介します

こんにちは。お客さんに嘔吐されて帰庫したタクシーを、翌日車検だった為にそのまま検査場まで運転していったことがある野の字です。片道45分の距離でしたが、服に髪の毛に悪臭がこびり付き、全身が一日中酸っぱくてたまらなかった記憶があります。

さて、嘔吐や失禁などの特異事案は別として、タクシー車両は1つの立派な店舗ですから、他の業態と同じように、日々の清掃は欠かせません。ここでは、タクシー運転手の主要業務である運転、接客、金銭管理、といったところから少し外れて、車両の洗車や車内広告の扱いについて説明していきます。

こまめな掃除が清潔感を生む

高めの料理店に限らず、ファミレスやファストフードに至るまで、毎日こまめにテーブルや椅子を拭き、閉店後や開店前には窓サッシの隅々まで磨いていたりします。タクシーとて負けてはいられません。

毎回帰庫後には、次に出庫するタクシー運転手さんのために、タクシーを綺麗に洗車する必要があります。なお人員不足等で、次にこのタクシーに乗るのも翌日の自分、とはっきりわかっている場合には、洗車せずに帰り、翌日早めに出勤し、洗車してから出庫する、といったことができるタクシー会社もあります。

タクシーと自家用の大きな違い

「毎回洗車すんのかよ、まじブラックだわ」と早合点してしまいそうですが、タクシーの洗車は、一般の自家用車とは大きく異なり、楽で簡単となっています。

自家用車で洗車といえば、洗剤とワックスが付き物です。1.水をかけ、2.洗剤をつけ、3.洗剤を落とし、4.拭く、というサイクルを洗車機や自分の手で行い、最後にはワックスをかけたりもします。

一方タクシーの洗車では、タイヤや室内マットレス等を除いて、洗車用洗剤を使いません。営業所には洗車場が備わっており、毎日洗っているのですから、洗剤が必要なほど頑固な汚れはこびり付かないのです。

ワックスもかける必要はありません。タクシー運転手さんによっては、非番の日に自腹でワックスを購入し、自分が頻繁に乗務するタクシー車両にワックスをかけにくる人もいますが、義務ではありません。ちなみに、無事故を祈願して日本酒をかけにくる人もいましたが、これについては整備士が難色を示していました。

さて、洗剤が要らないということは、洗車の手順は、1.水をかけ、2.拭く、という2つだけになります。工程数でいえば自家用車の半分です。

楽で簡単なのです。なお、タイヤ周りやお客さんの足がつく室内のマットレスについては、泥や油がこびり付き易いため、流石にピンク石鹸とブラシなどを使って擦り洗いをすることになります。

タクシー洗車の要所は、窓≧足元≧他

東京無線

もちろん、ただ水をかけて拭けばいいからといっても、洗車は洗車です。お客さんをお迎えするための立派な清掃業務ですので、丁寧に行う必要があるのはいうまでもありません。

しかし、大量の水をかけ続け、ただがむしゃらに拭き殴る、というのは非常に疲れます。タクシー運転手として一日の華々しい営業が終わり、最後の気力を振り絞っての清掃業務で、そんなに意地を張っていたら死んでしまいます。

ベテランタクシー運転手の皆さんが死なないのは、洗車のコツをわきまえているからです。気を使う要所要所だけには細心の注意を払い、あまり重要でないところは、なんなら洗いもせずに誤魔化したりしています。

まず何よりも気を使って拭き取るべき部分は、です。特にお客さんが乗り込む左側が大事ですが、透き通るような窓をしているタクシーは、車両全体まで非常に清潔であるという印象を放ちます。

一方で、指紋が付着していたり、雨上がりの水滴跡が残っていたりする窓などは、乗り込んだお客さんを不快な気持ちにさせ、下手をすると難癖などを付けられて、トラブルにも発展しかねません。

窓の次は、足元です。マットレスは一旦取り除き、その下にある床面や、コンソールボックスの後ろ側、助手席と運転席の裏側部分も丁寧に拭き取ります。コンソールや助手席の裏は、お客さんが足を置いてしまうことがあるため、土汚れが付いていることがあります。

車内に水をぶち撒くわけにはいきませんから、濡れ雑巾で丁寧に汚れを落とし、雑巾を変えて乾拭きします。マットレスは外に出して、洗剤を使用して水洗いです。

その他、左後部ドアの内張りやドアノブ、ハンドル周りなどの手が付くところを、よく絞った雑巾で拭いていきます。

その他は適当でかまいません。これがベテランの味です。

タクシーの車内広告について

ところで、タクシーには様々な広告が搭載されており、洗車や清掃の邪魔になることがあります。例えば、窓を拭いている際に、広告ステッカーが劣化して剥がれてくることがあります。

その場合は、いっそのこと剥がしとってしまい、営業所事務員に必ずその旨を伝えます。ステッカーによっては、広告主等との契約上、剥がすわけにはいかないものがあり、その場合は事務員が予備のものを貼ってくれたりします。

また、車内に広告ラックが付いていることがありますが、これらはタクシー専用の広告業者が搭載しているものです。ラックの中身にある冊子等が汚れたり、破れたりしていた場合は、捨ててしまえば、そのうち休車の日に業者が補充をしてくれます。

また、ラックそのものが汚損している場合は、営業所事務員に報告し、ラックを丸ごと取り外させます。下手に部品が残っていると、お客さんが怪我をしてしまう可能性があるためです。

場所によって雑巾をわけて!

タクシー車内

洗車については、要所だけに細心の注意を払うということに加えてもう一つ、雑巾の数には注意が必要です。

窓だけで水拭き用と乾拭き用の2枚、その他ボディ用で1枚、車内の床やコンソール等の水拭きが1枚、同じく乾拭きが1枚、ハンドル周り等のために濡れ雑巾が1枚、と合計6枚の雑巾やタオルを使い分けることが重要です。

掃除している間は布にまみれる様になってしまいますが、とても大切なことです。

すでに退職していただきましたが、窓も床もハンドルも、全て1枚の雑巾で掃除するタクシー運転手が居ました。見栄えも悪ければ車内も泥臭く、生乾きの匂いまで漂っており、次に出庫するタクシー運転手さんが早退するなどしてしまい、同僚の評判も最悪でした。お客さんをお迎えするための掃除ですが、一緒に仕事をしていく仲間のためでもありますので、お互いに気持ちよく仕事ができるように意識することも必要です。

洗車機や洗車屋さん

タクシー会社によっては、洗車機を導入しているところもあります。有料、無料の別も会社によるようですが、外装の洗車が自動化されるので、負担がかなり減ります。また、帰庫途中にガソリンスタンドへ寄って、自腹で洗車機を通してしまうタクシー運転手さんもいました。

さらに、多くのタクシー会社で、洗車屋さん、と呼ばれる人々がいらっしゃいます。営業所の洗車場に陣取り、帰庫したタクシーを捕まえて、数百円から千円強で洗車を代行してくれる人々です。非番や明け番のタクシー運転手さんが務めていたり、会社が専門の人を雇っていたりもします。疲れている時や、チップを貰ったりして金銭的に余裕がある日、早く帰宅したい場合などは、依頼してしまうのも手です。

接客業としての清潔感を

転職の際は洗車機などのサポートも確認しよう

タクシーの洗車は、自家用車よりも工程が少なくて簡単ですが、お客さんと同僚のために、丁寧な仕事を心掛けることが大切です。情けは人の為ならず、ですから、接客成績の向上や、快適な労働環境の構築に結びつきますので、ないがしろにはできません。

毎回の清掃作業というと面倒な感じですが、洗車機や洗車屋さんなど、サポート体制が整っているタクシー会社が多いですから、会社を選ぶ際には意識してみてみるとよいでしょう。



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20代でタクシー業界に飛び込み、運行管理者として業界準大手の会社に就職。タクシー運行管理の他、交通事故処理や苦情対応、本社に異動してからは新人研修等も任されるようになり、タクシー関連業務の多方面で活躍。顔も名も明かせない恥ずかしがり屋