タクシードライバーの給料の仕組みを解説

ちゃんと稼げるの?同年代との差は?どこでやると一番もうかるの?

最近のネットや紙ベースの求人媒体では、タクシードライバー(タクシー運転手)募集の広告が花盛。私も御多分に漏れず、その媒体に引っ掛ってタクシードライバーになった1人ですが、一昔前のタクシードライバーへのイメージは下記のような感じでしたね。

  • 「人生の落後者」
  • 「一般企業に勤められない問題人物」
  • 「年金受給前ジジババのお遊び程度の仕事」

しかし、2~3年前からは給料や待遇に惹かれてなのか、大卒の若者がワンさとタクシードライバーになるためにタクシー会社に押寄せる(汗)ようになったのです。一部の大手タクシー会社では、毎年100人超え(驚)の新卒者を採用(驚)しているほど。

「どうせすぐにみんな辞めちゃうんだろう?」

何て声も耳にしますが、少なくともウチの会社に3年前に入社した新卒者5人は、家の関係で辞めた1人を除いて後はみんな元気に街中を走っています。

「そんなにタクシードライバーの給料や待遇って良いの?」
「一体どれ位の給料なのか知りたいな」

と思われた皆さん!今回は給料面からタクシードライバーへの転職を考えている皆さんに、「タクシードライバーの給料って?」と給料面の話を中心に紹介します。

タクシードライバーのお給料を決めるシステム

一体どの位稼げるの?

ますは「論より証拠」とでも言いましょうか……下の写真をご覧下さい。

これは、私の今年に入ってから貰ったある月の給料明細です……皆さん如何でしょうか?。

「タクシー会社の成績トップの人のを借りたんじゃない?」
「絶対数字いじってるよね(笑)」

と言われるでしょうが、紛れもなく私の給与明細です。この数字でタクシー会社の中での順位は上位5~10%の中。まぁ成功した部類ですが、同じ月に一番貰った同僚の手取りは60万を超えていました(恐)。

もちろん、ウチのタクシー会社は歩合制給料です……歩合だからこそ“やればやる程、給料は上がる仕組み”です。

もちろん夜勤はありますが就労条件は国の法律で厳格に決められているので、どこぞのブラック企業宜しく“勤務時間は永遠。死ぬまで働かされる”なんて不安は絶対ありません。もしそんな事をすれば、電通みたいに即国交省の監査が入って半年も経たない内に会社は“取り潰し”となりますから、管理者も無茶な事は出来ない契約です。

さて、どの位の給与や年収をもらえるのかという話をする前に。ここでタクシードライバーの給料システムならびに歩合システムについてお話します。給料や歩合のシステムを理解しておかないと、これ以後話す内容を理解出来なくなるからです。

給料システム

全国のタクシー会社がタクシー運転手へ支給する給料の算定方法は、主に以下の3パターンです。

  • A型賃金
    サラリーマン方式。一定の乗務時間or乗務日数をクリアすれば営業成績の多少に関わらず一定の月給が支払われ、営業成績の反映はボーナスで調整。主に地方のタクシー会社で行われている賃金体系で、時給で働くバイトに似ていて、平均年収は安定します。未経験の人や月収を固定させたい人におすすめ。
  • AB型賃金
    営業成績(売上)に連動させた“能率給”と“ボーナス”となるシステム。
    ただし、年金・健康保険など公的支出を確定させるため、一定の金額が基本給と定められている。つまり、安いなりに最低限もらえる月給はあります。A型同様出勤日数を達成した者に一定額の月収が支払われ、そこから年金等を天引き。残りと能率給(歩合)を併せた分がその月の月収です。今の日本のタクシー会社の7割近くが、この給料体系に移行している。歩合があるため運転量を稼ぐ必要はありますが、より高い年収を目指せます。
  • B型賃金
    またの名を“オール・バイ・賃金”。営業成績全体の60~70%が即タクシードライバーの収入と成る仕組み。運転すればする程給与が上がる反面、燃料代や保険代・年金などを自前で負担せねば成らず、非常に不安定。収入のためには運転する場も考える必要があります。ただ、個人タクシーの給料体系に似ているので、将来個人で独立したい人には、事前の練習として格好の場。

私の会社はAB型なので、基本給+能率給+各種手当(深夜手当など)が入った形で支給。

ところで、賃金の話に絡んでもう1つ覚えて欲しい話があります。それが、先程話をした基本給支給に関する規定の話。

AB型にはどのタクシー会社にもタクシードライバーには、いわゆる“ノルマ”があり、業界用語で“足切り”と呼ばれるモノが存在しています。タクシードライバーに課される1日当たりのノルマ額は大体35,000~50,000円。この売上を全出勤日の平均で達成出来なければ、基本給のみの支給で後の能率給や手当は全てカット。当然月給には大きなダメージとなります。客に料金の踏み倒しなんてされたら痛いのは、その日の稼ぎ以上にノルマに関わってくるからです。

とは言えノルマの対象となるのは平均。無駄な送迎や料金の踏み倒しが頻繁にあるわけではありません。真面目に業務しているタクシードライバーなら月の平均でノルマ未達成とはなりづらく、むしろ足切りを使って燃料代や保険代などを負担してくれるので、安心して働けるとも言えます。

さて、横道にそれ過ぎましたが、改めてタクシードライバーになれば一体どのくらい儲かるのか?下の表を見て貰いましょう。

タクシードライバーの賃金を他の業界と比較

2016(平成28)年度 男性タクシー運転手と男性一般労働者の賃金比較

全国男性タクドラ 全国男性一般勤労者 両者の差額
H28年度平均年収(込賞与) H28年度平均年収(込賞与)
3,320,100 5,484,300 -2,164,200

資料:全国ハイヤータクシー協会HP

あっちゃぁ~(泣)やっぱタクシー業界への転職なんて……高給じゃないじゃない!大した収入じゃないじゃない!と思ったそこの貴方、ちょっっっっと、待ったぁぁぁぁぁ~!!!

この年収の数値をどの母集団から出してるのかもう一度見て下さい!一般労働者とは農業からITまで幅広いくどんな所でも仕事は起きて、それなり収入を得られる条件になります。

しかし、タクシードライバーの幅は非常に広い。金曜の夜は入れ食いになる東京のタクシードライバーから、何km走らせようがキタキツネしかお客さんがいない北海道の北の果て(失礼)のタクシーの運転手までの平均収入をグロスしてるんです。

では、上の表の全国タクシードライバー年収を、東京都内の運転手の年収だけに置き換えたらどうなるでしょうか?。

東京都内男性タクドラ 全国男性一般勤労者 両者の差額
H28年度平均年収(込賞与) H28年度平均年収(込賞与)
4,428,200 5,484,300 -1,056,100

これでもまだ世間の相場からは年収で100万円以上の差はある……そう、差はあります。でも考えて見て下さい。この東京都内平均は、いわゆる23区+武三地区(武蔵野【吉祥寺】&三鷹エリア)に、三多摩地区や島嶼部(伊豆大島・八丈島など)が加わった平均値。それがもし、いわゆる23区内業者……しかも東京四社(大和・日交・帝都・国際=いわゆる「大日本帝国」)と呼ぶ大手会社での勤務となったらどうなるか……

東京四社系男性タクドラ 全国男性一般勤労者 両者の差額
H28年度平均年収(込賞与) H28年度平均年収(込賞与)
4,917,600 5,484,300 -566,700

どうですか皆さん、もうここまで来たら賃金差なんてほぼないですよね。後は頑張り次第という事で。要するに、タクシードライバーは頑張り次第で給料の値段が増えたり減ったりします。少なくとも、東京の主要タクシー会社で働くタクシードライバーは、平均的な世間様並みの生活は送ってると言う事。他のエリアのタクシー運転手でも、生活水準に照らし合わせば、きっとそれなり良い生活は送ってるはずです。

給与は経験年数と年齢によってどの位幅が出るの?

ここでは、タクシードライバーの経験年数と年齢が、給料にどう影響するか見て行きましょう。またまた私事で恐縮なのですが、私は45歳の時にタクシードライバーになりました。そして初年度の源泉徴収票に記された給料合計は……

¥5,018,872

でした(久々見たなぁ~)。で、これが5年後どうなったか??。ちなみに去年の源泉徴収票では

¥5,486,079

となっていました。要するに、タクシードライバー歴5年、せっせと運転を繰り返した結果、約50万近く身入りがアップした事になりますね。

「あれぇ~、タクシー業界って期待したほど給料って上がらないんだな。」

って思われるかもしれませんが、これがタクシードライバーの現実。
タクシードライバーの給料は、大企業の様な年功序列ではなく、昨今流行りの成果型給与そのものです。歩合ですから。年がどうだの経験がどうだの関係なく、頑張って稼いだ人には給料を出す仕組み。

とは言え、経験もなく東京の道の地理など全く解らないタクシードライバーが……
はぁ~い、今日から1人で稼いでおいでぇ~!

何てやられたら、それこそブラック企業そのものですよね(笑)。タクシードライバーという仕事は、成ってすぐ稼げるようにはなっていないのです。

例えば……

  1. 道路の知識……都内の環状八道路+放射20道路全てをチャンと言えますか?
  2. 地理の知識……いきなり言われた地名が、どこにあるのか解りますか?
  3. ルートの知識……その場所から言われた場所まで、最低3ルート言えますか?
  4. 施設の知識……目的の施設の正しい入口にご案内出来ますか?

以上4点間違いなく出来れば、年収500万(年齢不問)は保障します

でも、年収500万が保証されるような運転ができるようになるには、早くて 3~5年はかかります!

と言うのも、自分が担当する営業エリアをくまなく運転しようとするなら、どんなに乗車回数を増やしても、3~5年はかかる。まして、収入増に走って銀座や六本木ばかり張ってると、どうしても乗客を乗せて運転する場所が偏るから、上の4点が出来ないエリアがどうしても出て来る訳。

私が新人タクシードライバーの頃、試用期間中は大手町や六本木の会社の乗り場に入って営業をしてはいけないという規則があり、当時仕方なく新宿歌舞伎町や渋谷、門前仲町や蒲田でお客にドヤされながら営業をやってた……今から思えば、そうした運転の経験があるから、今の私の年収があると思いますよ。

ただ、タクシードライバーの世界は広いモノで、私の様な40~50歳のガッツリと高い年収を目指す派も居れば、60歳を過ぎて年金を貰いながらまったりと運転しているジーちゃん&まだ運転もおぼつかない20代のピチピチ新卒も居て、給料の幅は際限なく広がっています。給料の差はもちろん歩合の差です。

もし、どうしても年齢別のタクシードライバーの収入を知りたい場合、下記の式に当てはめると良いと聞いた事がありますので(あくまで概算ですが)、参考にして見て下さい。

  • 20~40歳:年齢×10万×0.9
    (例)37歳の場合
    37(歳)×10(万)×0.9=333(万)
  • 41~55歳:年齢×10万
    (例)54歳の場合
    54(歳)×10(万)=540(万)
  • 56~65歳:年齢×10万×0.75
    (例)60歳の場合
    60(歳)×10(万)×0.75=450(万)
  • 65歳以上
    一般に一律300(万)と言われている

一番稼げるエリアは?

さて、此れまで話した内容から、皆さんはタクシードライバーとして最も稼げるエリアは……

TOKYO(とぉ~きぃ~を)

と思われた方が殆ど他と思います。でも、現役タクドラである私としての答えは……

ブッッつブゥゥゥ~(×だっめぇ~~×)

と言ってしまいます。この記事を読んでいる現役の運転手の方も、想いは同じだと思います。とは言え、今や日本中からタクシードライバー希望者が殺到する東京は、数値的に見ても確かに稼げるエリアに見えてしまうのです。

H28年度
東京男性タクドラ年収
H28年度
大阪男性タクドラ年収
H28年度
福岡男性タクドラ年収
¥4,428,200 ¥3,618,300 ¥3,085,500

と給与総額から見れば、圧倒的に「とぉ~きぃ~ヲ」と思ってしまいます。でも、この数値を給与総額ではなく、前年度の給与総額と比べ幾ら増えたか見ると……

H28年度
東京男性タクドラ年収UP額
H28年度
大阪男性タクドラ年収UP額
H28年度
福岡男性タクドラ年収UP額
¥497,800 ¥476,200 ¥423,000

上記の通り、東京・大阪・福岡共に殆ど増収額に対して差はありません。むしろ増収額をパーセンテージで考えれば、福岡のタクシードライバーの増収率は全国一と見てもおかしくありません。

メディアの情報で、最近福岡にはIT系の企業がどんどん進出しており、東京など首都圏から移り住んだ人達が、東京での生活同様朝の通勤にタクシーを利用するケースが増えている事。
しかも、自宅から福岡都心まで大体1,500~2,000円程度で利用出来るので、往復利用や休日利用も進んでいるので、福岡のタクシー市場は活性化していると聞きます。

一般的に、タクシーという仕事は“東京だから儲かる”とか“福岡へ行けば稼げる”という類いの仕事ではありません。どの場所へ行っても「タクシーギョーカイの鬼」と言われるくらい高い年収を得ている運転手は一杯居ます。そう言うタクシードライバーに共通して言える事は……

  • 自分の生活圏(自宅)から一番近い“都心”の会社で働く(これ一番大事!)
  • 繁華街は時間を決めて入り、入り浸りしない(地獄になって出られない可能性)
  • 子連れ&高齢者の短距離客を良く乗せる(常連になってくれる可能性大)
  • 空港・駅付けは、必ず深夜・早朝(それ以外は電車・バスに客を奪われる)

上の四項目をちゃんと守って走っていれば、どこだってしっかり稼げますよ。

ドライバーになるために、一体どの位費用がかかるの?

ではでは……今回皆様が注目してるタクシー業界への転職に関して、給料と同時に一番気にされてるお話…そう、転職に掛かる費用についてお話しましょう。

スバリ、言います。タクシー会社へ転職する際に掛かる費用は……

ありゃ……福岡の話をしたらソンさんが出て来ちゃった(汗)
なのです。そうゼロ円。

まぁ正確に言えば、応募の時に提出する履歴書用紙や写真代、面接の交通費位ですね。それさえ持って行って、会社が「では〇〇病院へ健康診断に行って下さい」と言われれば、ほぼ内定だと思って下さい。と言うのも、これ以降の経費は一切会社持ち。HIVとかよっぽ度変な病気に掛かってない限り入社に向けた手続きは進んで行きます。

そして正式に入社が認められると、まずどちらかの道を歩む事になる……それは、

  • 地区管轄のタクシーセンター(タクセン)で“初任研修”を受ける
  • 教習所へ行って“二種免許”の教習+試験場で“二種免許”の試験に合格する

のどちらかです。ただ、タクセンの研修終了後(東京・大阪などは+地理試験合格)すぐにライセンスの発行に掛かりますから、二種免許を取らせるのを先にさせるケースが多いですね。ちなみに、この二種免許取得に関する費用も試験での受験料も勿論会社持ち。

ただし、二種免許の試験は結構難しいので一発で受かるのは至難の業。落ちた際の受験場は自腹です。

そしてもう一つ自腹が出て来るのが、東京や大阪のタクセンで最終日に行われる“地理テスト(通称「道のカルトクイズ」)”の受験料。決して安くなく、平気で2~3回落ちて来ると言われますが(私も1回落ちた)、合格するまで自腹が続きます。聞いたところ10回落ちて受かった人がウチの会社に居るらしいです。

では、会社がタクシードライバー養成に掛けた費用は一体どうなるのか??

それが、前にお話しした“足切り”と関連して来るのです。要するに、会社はタクシードライバー養成の費用を負担する代わりに、タクシーのドライバーになってから、毎月の稼ぎの中から回収すると言うシステムを取ってます。大体2~3年で返すのが一般的で、これが出来ない運転手はタクシー会社からか肩たたきを食らう。これがホントの足切りってか。

まとめ

タクシードライバーの給料は十分に高い!

タクシー業界への転職希望の皆さんに、生のお話をさせて頂きましたが参考になりましたでしょうか。今はオリンピックやインバウンド景気の関係でイケイケのタクシー業界ですが、一昔前は生活保護以下の給料しか貰えてなかったのが実情です。

昔と比べて、正社員になる道が厳しいと言われるこの世の中、確かにタクシードライバーで正社員になる道を求める気持ちは解りますし、福利厚生が手厚い事でタクシー運転手になる事を選択肢とする方も多いと聞きます。

しかし、労働条件は生半可なく厳しい上に病気や事故で何時失業する危険性は捨てきれませんし、歩合で稼がないと年収が低いのは今も昔も大差ありません。
加えて、業界の主となって年収1000万の道を歩むには、5年どころか10年は乗り切らないとダメ……そこまで皆さんが持つか補償は出来ません。かく言う私も「正直よく5年持ったなぁ」と言う気持ちと同時に「他に良い日勤のリーマン生活があるなら、今すぐにでも転職したい」と言うのがホンネですよ。

確かに運転中は自由度が高く、煩わしい人間関係を嫌うなら良い仕事ですが、タクシー業界のことを「歩合で半端に儲かる業界」と妄想を持って入って来る人は、半年も経たない内に辞めます。むかし保険外交の仕事をやってた事がありますが、良く似ています。歩合があるから儲かる人は儲かる。でも、そこへたどり着くまで辛抱できるか?。

メディアが騒ぐ様に酷い労働条件ですが、覚悟があるならお越しを。まぁ、それなり良い生活は出来ますけどね。



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今年6年目の乗務員生活を謳歌している現役タクシードライバー。1967(昭和42)年生まれ。2013(平成25)年日本交通系タクシー会社のドライバーとなる。黒タク資格&スリースター(最上級乗務員)資格所有。